最近、市民検診や人間ドッグで血液検査だけで胃がんになる危険度が分かるというABC検診が始まりました。この検査では、血液検査で胃がん発症の危険性をABCDに判定し、A判定以外の人には胃内視鏡検査を強くお勧めするというものです。
この検査では、血液中のペプシノーゲンとヘリコバクターピロリ抗体(以下ピロリ抗体)を調べます。以前から慢性胃炎である萎縮性胃炎が強い人に胃がんの発症が多い事が知られていました。この萎縮性胃炎が進むと血液中のペプシノーゲンが低下してきます。
また、ピロリ菌が胃にいる人に胃がんが発症しやすい事がここ20年位前から分かってきました。血液中のピロリ抗体が陽性の人にはピロリ菌がいる事が多く、服用薬物等の影響を受けずに測定出来るという利点があります。
そこで、ペプシノーゲンが正常でありピロリ菌抗体陰性の人はA判定、ペプシノーゲン正常だがピロリ菌抗体陽性の人をB判定、ペプシノーゲン低値(これをペプシノーゲン陽性と判定)でピロリ抗体陽性の人をC判定、ペプシノーゲン陽性でピロリ抗体陰性の人をD判定とします。また、E判定はすでにピロリ菌を除菌した人が入ります。
それぞれの判定の中での胃がん発症頻度はA群がほぼ0、B群が1,000人に1人、C群が500人に1人、D群が80人に1人、E群の除菌された人では、胃がんの発症する人の約半分は3年以内、約3割は5年以後に起こっています。したがって、A判定以外の人は内視鏡検査による2次検診が必要であるというわけです。
このABC検診は、血液検査だけで胃がんの発症リスクを予測するという点で、とてもすばらしい検査であると思います。今後この検診でA判定以外の人が内視鏡検査を受けさらにピロリ菌除菌療法を受ける事によって、胃がん患者数および胃がんでの志望者数は確実に減っていくでしょう。
しかし、皆さんに知っておいて頂きたいいくつかの注意点があります。
- 毎年胃の内視鏡検査を受けている方はこのABC検診を受ける必要はありません。
- ABC検診でA判定であっても胃がん発症リスクはゼロではありません。特に悪性度の高い胃がん(スキルスとして知られている)はピロリ菌陰性の人から出てくる事が多いので、A判定であっても定期の内視鏡検査は受けた方が良いです。
- このABC検診後にピロリ菌の除菌療法を受けピロリ菌陰性となっても、将来胃がんにならないと保証された訳ではありません。定期的な内視鏡検査を必ず受けてください。