多くの人が悩んでいる便秘。便秘の原因は、人によって異なります。どうして便秘になるのでしょうか?
急性便秘と慢性便秘
急性と慢性をわける明確な定義は存在しませんが、一般に急性便秘は数日から数週間で発症し、原因が取り除かれると従来の排便習慣に戻ります。一方、慢性便秘は数ヶ月以上に及び、特発性便秘と続発性便秘に大別されます。
1.特発性便秘
特発性便秘は明らかな誘因がなく生じる便秘で、最も多いタイプの便秘です。生活習慣やストレス、加齢などの影響を受けて、大腸や直腸・肛門の働きが乱れることが原因です。
a)弛緩性便秘
大腸は少しずつ水分を吸収しながら、ぜん動運動によって内容物を直腸へと運びます。弛緩性便秘は、ぜん動運動が弱まることが原因の便秘です。高齢者がなりやすい便秘で、体力や筋力(特に腹筋)の低下が原因です。長期にわたり刺激性下剤を服用している方も、ぜん動運動が弱まることでこのタイプの便秘になることがあります。
b)痙攣性便秘
大腸のぜん動運動に連続性がなくなり、便の通過に時間がかかり過ぎて起こる便秘です。ストレスの影響が強いと考えられています。
c)直腸性便秘
運ばれてきた便が直腸(大腸の出口付近)に入ると、直腸のセンサーが働き便意をもよおします。便意を習慣的にがまんしていると直腸の神経の感度が鈍り、このタイプの便秘になります。
2.続発性便秘
a)薬剤性便秘
薬剤の副作用として起きる便秘です。抗うつ薬、抗コリン薬(ぜん息や頻尿、パーキンソン病などの薬)、せき止めなどは大腸のぜん動運動を弱め、便秘になることがあります。
b)器質性便秘
大腸に生じた形態的変化が原因の便秘です。大腸の狭窄あるいは外部からの圧迫などのために、通過障害で生じる便秘です。大腸がんや手術後の癒着、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)などで、便がスムーズに通過できなくなるために起こります。このタイプの便秘では、まず元の病気を治すことが基本です。
c)症候性便秘
腸管に器質的な異常はないものの、何らかの疾患のために二次的に便秘をきたすことがあります。甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症では大腸のぜん動運動が弱くなることがあります。神経疾患や筋疾患、糖尿病の合併症などで、神経の働きが鈍くなった場合も、このタイプの便秘になります。
便秘治療に使われる主な下剤
- 1)浸透圧性下剤・・・便を軟便化させ、排便を促します。
- 2)刺激性下剤・・・腸管神経叢に直接作用し、ぜん動運動を亢進します。頓用で使用します。長期間連用すると、効きにくくなります。
- 3)膨張性下剤・・・薬剤自体が腸管内の水分を吸収して膨張し、大腸に刺激を与えてぜん動運動を促進します。
便秘になりやすい人は、食事のリズムを整えて、食物繊維や水分を十分に摂りましょう。乳酸菌を含むヨーグルトや納豆などの発酵食品、オリゴ糖などは腸内環境を整え、便秘を改善してくれます。運動不足は、便秘の原因になります。特に体力や筋力の低下が原因となる弛緩性便秘の場合は、腹筋などの運動が効果的です。消化管の動きは自律神経でコントロールされているので、便秘の改善にはストレスを解消することも大切です。
便秘で困っている方は原因に応じた治療をすることと、重大な病気がないことの確認のために大腸内視鏡検査をしておくことが重要です。