「動脈硬化」という言葉から皆さんは何をイメージされますか?文字通り動脈が硬くなって弾力性が無くなり、内腔が最終的には詰まって使い物にならなくなる。そんな感じでしょうか。一度硬くなった動脈は元には戻らないと言われますが、確かに一度硬くなるとなかなか逆戻りはしにくいようです。動脈硬化は私たちの住居でいえば水道管や排水管みたいなものです。長年使っていれば劣化してきます。赤ちゃんの血管は極めて軟らかい管ですが、50年も使うとそれなりに硬くなり内腔にも付着物が溜まってきます。
動脈硬化は年齢と共に少しずつ進んでいきます。これは生理的変化であり避けられない事です。病的に動脈が硬化していく事を避ける事が大切です。そのためには、動脈硬化を進行させる病気である糖尿病・脂質異常症・高血圧のコントロールをしっかりとすることが重要です。血糖値は空腹時血糖値と食後血糖値の両方が大切です。空腹時血糖が正常であっても食後2時間の血糖値により糖尿病か否かが決められています。健康診断では空腹時血糖と1、2ヶ月の平均的な血糖値を反映するHbA1cの値が測定されます。両者の値が基準値内であれば通常は心配ないと考えます。脂質異常症ではLDLという俗に言われる悪玉コレステロールが大切です。LDLは120㎎/㎗未満が正常値、140㎎/㎗以上では異常高値です。善玉コレステロールであるHDLは40㎎/㎗以上ある事が必要です。血圧は家庭で測定したものが115/75mmHg以下が正常です。今だに年齢に90を足して、、という方がいらっしゃるので驚かされます。
現在そうした生活習慣病がない方は、喫煙、食生活、運動習慣を見直す必要があります。特に喫煙は最も動脈硬化と関係があります。脳梗塞や心筋梗塞になりたくなければ、今すぐに喫煙をやめるべきです。食事の内容では、動脈硬化性疾患の発症頻度を下げる事が分かっている食品は5種類あります。①野菜②果物③魚④ナッツ⑤オリーブ油 です。
野菜の中で何が良いのかというデータはないようです。葉物や根菜など色々な種類の野菜を摂ると良いでしょう。特に色の強いものはポリフェノールも豊富で良いかもしれません。果物はジュースではなく丸ごと食べると良いです。食物繊維を摂る事で糖質の吸収が緩徐となります。果物の中では特にブルーベリーやいちごにアントシアニンというポリフェノールが豊富に含まれており動脈硬化抑制効果が期待されます。魚は特に青魚が良い言われています。イワシやサンマ、サバなどを頻回に食べてください。ナッツは塩分未使用の素焼きのものを間食として摂るのも良いでしょう。オリーブ油はなるべく質の良い物が推奨されています。夕食が終わった時に1日の食事を振り返って頂き、この5種が摂れたかを確認し、未摂取だったものは翌日の最優先食品として考えて頂くと良いでしょう。
運動は少し息が弾む位の有酸素運動を週に150分以上すると良いと言われています。一番簡単なのは早歩きを1日30分する事です。なかなか習慣化しないと難しいですが心がけて頂くとよろしいかと思います。
動脈硬化が実年齢に比してどれくらい進んでいるかという測定ができます。これは脈波伝播速度という血管に伝わる波の速度から測定するものです。軟らかい血管ではゆっくり伝わる事を利用しています。また、頚動脈を超音波で観る事で動脈壁の厚さと血栓付着状態を知る事が出来ます。自分自身の血管状態を把握して、日常生活の改善対策の参考にしてください。