あなたの体調不調の原因は鉄不足かもしれません
鉄不足は貧血のみならず、身体に様々な影響を及ぼします。血液検査の結果は貧血でなくとも潜在的な鉄欠乏の方は相当数います。血液検査の赤血球数、ヘモグロビンなどに続いて「MCV(平均赤血球容積)」という項目を確認してみてください。MCVが95を下回り、かつ以下のような症状でお悩みの方は鉄欠乏が疑われます。
- 動悸、めまい、肩こり、頭痛
- 皮膚、爪、髪の毛、粘膜のトラブル
- あざ、歯茎の出血、抜け毛など
- 氷を好んで食べる
- 食欲不振、注意力の低下、イライラ感、抑うつ感
人体の鉄分量
体内の総鉄量は3~5gです。その内、60%~70%は赤血球のヘモグロビンに含まれ、残りの20%~30%は肝臓や脾臓、骨髄などに貯蔵鉄として蓄えられています。この貯蔵鉄は、血液中の「フェリチン」という鉄結合タンパク質として貯蔵されており、体内の鉄が不足すると、まずは貯蔵鉄から使われます。食事中の鉄分がたりなくても、すぐに貧血になるわけではありません。血液中の鉄が不足すると、体内の貯蔵鉄から不足分が補われ、貯蔵鉄が底をつき血液中に鉄の補充ができなくなると貧血になるというわけです。
鉄は体内で酸素を運搬するほか、酵素の一部(チトクローム)としてエネルギー作りに関係したり、活性酸素から体を守ったりしています。皮膚にとって大事なコラーゲンをつくり出すのにも鉄、タンパク質、ビタミンCが必要です。また、やる気を高めるノルアドレナリン・ドーパミン、興奮と抑制のバランスを調整するセロトニンといった脳内神経伝達物質が体内でつくられる際にも鉄が必要です。
そのため、鉄欠乏は貧血のほかにも次のような様々な症状をひきおこします。
① 骨・皮膚・粘膜の障害(あざ、コラーゲン低下による骨・肌異常、爪・毛髪・舌異常)
② 知能・情動への影響(不眠・集中力低下・うつ・パニック障害)
③ ホルモンへの影響(甲状腺ホルモンの成熟障害、不妊症)
④ 白血球・免疫への影響(抵抗力の減少)
⑤ 消化系に及ぼす影響(嚥下障害、食欲不振、下痢、便秘、氷を好んで食べる)
⑥ いわゆる不定愁訴(頭痛、イライラ、耳鳴り、肩こり、寝坊癖、疲労、むずむず脚症候群など)
鉄欠乏の原因
鉄の喪失:月経での出血や、胃潰瘍・大腸癌・痔核・子宮筋腫などで出血が続くと大量の鉄分が失われます。
鉄の供給不足:偏食・ダイエットによる鉄の摂取不足、鉄の吸収障害(胃切除など)
鉄需要の増加:成長期や妊娠・授乳期など鉄分の需要増加
鉄欠乏がある方は、フェリチン値(貯蔵鉄)が60~100ng/mlになるまで鉄分補給をしたいところです。食事中の鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄とが含まれています。ヘム鉄は肉や魚に多く含まれ、非ヘム鉄は穀類、緑黄色野菜、海草に多く含まれています。非ヘム鉄はヘム鉄に比べ吸収率が低いので、動物性食品と一緒にバランスよく食事で摂ることがポイントです。また、ビタミンCと共に摂ることで、より鉄の吸収率を高めることができます。
鉄欠乏が著しい場合は鉄剤が処方されますが、むかつきや便秘といった副作用で鉄剤の内服が苦手な方もいます。このような鉄剤内服が困難な方には、鉄剤の点滴を行いますが、従来の点滴は1本の注射に20mgの鉄が含まれていて、鉄欠乏性貧血の方に対して週2~3回、合計で10~20回くらい点滴する必要がありました。しかし、最近の点滴は1本の注射で500mgの鉄剤を補充できる製剤(カルボキシマルトース第二鉄)を使用しています。週1回の投与を1~3回で鉄欠乏が改善します。ご希望の方は是非ご相談ください。