近年の地球温暖化や猛暑の常態化により、屋内外を問わず熱中症が急増しています。最近の速報によると、2025年6月16日から6月22日の1週間で、全国で8,603人が熱中症により救急搬送されました。これは昨年同時期の3倍以上にあたります。
熱中症とは、高温多湿な環境で長時間過ごすことで体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなって現れるさまざまな症状の総称です。汗をかいたり、十分な水分・塩分を補給できていなかったりすると体内の水分量が減少し、脱水症になります。脱水が進行すると熱中症になります。
熱中症は軽度の熱失神・熱痙攣、中等度の熱疲労、重症の熱射病に分類されます。
<熱中症の分類>
熱失神
炎天下にじっと立っていたり、立ち上がった時や運動後などに起こります。皮膚の血管の拡張と下肢への血液貯留により血圧が低下し、脳の血液量が減少してめまいや失神が起きます。足を高くして寝かせると通常はすぐ回復します。
熱痙攣
大量の汗をかいたにもかかわらず塩分を摂らず水だけを補給した時に起こります。血液中の塩分濃度が下がるのが原因です。手足や腹筋などの筋肉に痛みを伴う痙攣が見られます。
熱疲労
脱水に加え、発汗による熱の放出が追いつかなくなり、循環機能が障害された状態です。激しい喉の渇き、尿量減少、倦怠感、気分不良、頭痛、めまい、嘔吐などが見られ、放置すると熱射病に移行します。
熱射病
脳の体温調節機能が障害され、体温が40℃以上に上昇します。皮膚は乾燥・紅潮し、意識障害、不穏な言動、全身痙攣などの症状がみられます。進行すると多臓器障害を起こし、致死率が高く緊急治療が必要です。
<熱中症の予防>
環境に注意
炎天下の外出は控え、帽子や日傘を活用しましょう。冷却タオルや保冷剤、携帯扇風機も有効です。室内でも熱中症は起こります。エアコンや扇風機で室温を28℃以下に。カーテンやすだれで日差しを遮ることも効果的です。
体調の管理
軽い疲労でも熱中症リスクは上がります。睡眠不足は自律神経の働きを弱め、体温調節が難しくなります。過労や体力低下時は無理を避けましょう。基礎疾患がある方は医師の指示に従いましょう。
水分・塩分補給
のどが渇く前から意識的に水分をとり、塩分も補いましょう。スポーツドリンクはカロリー過多にならないよう少し薄めて飲むとよいでしょう。
<熱中症の応急手当>
「いかに早く体温を下げるか」がポイントです。
休息
涼しい場所で休ませ、安静に保ちます。衣服を脱がせて体を冷やしやすくします。
冷却
衣類をできるだけ脱がせて、体に水をかけます。皮膚の血流を保つため、常温の水やぬるま湯を使って手足と体幹をマッサージ。氷嚢や保冷剤を脇、首の横、股の間に当てて血液を冷却します。
水分補給
意識がある場合のみ水分を与えます。水に塩一つまみと砂糖五つまみを加えると代用飲料が作れます。意識障害や嘔吐がある場合は医療機関での輸液が必要です。
熱中症は予防可能な疾患です。
こまめな休憩と十分な水分・塩分補給を心がけ、日頃の体調管理に気をつけましょう。