皆さんは、定期的にがん検診を受けているでしょうか。
2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代、がん検診は私たちの寿命を延ばすために欠かせません。
ただし、がん検診の目的は「がんを見つけること」そのものではありません。大切なのは、治せる段階で発見し、結果として死亡率を下げることです。
進行が非常に遅いがんや、早期発見しても寿命が延びないがんを見つけても意味はありません。
科学的根拠に基づくがん検診とは、厳密な研究の結果、「受けた人の方が、受けなかった人より死亡率が下がる」と証明されている検診を指します。
実は、この条件を満たすがん検診は、現時点で5種類しかありません。どのがんか、ご説明します。
① 胃がん
日本では胃がんが比較的多く、特に中高年でリスクが高まります。
胃X線検査(バリウム)や胃内視鏡検査は、50歳以上を対象に死亡率減少効果が示されています。
胃がん患者の約87%はピロリ菌感染が関連しており、除菌療法は発症予防に有効です。
欧米では胃がんが少ないため、定期検診は行われていません。
② 大腸がん
便潜血検査(FOBT)は、大腸がん死亡率を確実に下げることが複数の大規模研究で証明されています。
便に混じった目に見えない血液を検出し、陽性であれば大腸内視鏡検査を行います。
45歳以上では特に重要で、日本でも推奨されています。
大腸内視鏡検査がどうしても受けられない方は、便潜血検査を毎年受け、陰性を確認してください。
③ 肺がん
欧米では、喫煙歴の多い高リスク者に対して低線量CT検査を行うと死亡率が下がると報告されています。
一方、日本では長年、胸部X線+喀痰細胞診を用いてきました。これは国内の疫学データ解析から有効性があると判断されたためで、欧米とは方法が異なります。
現在、日本でも低線量CTの有効性について検討が進められています。
④ 子宮頚がん
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因です。
細胞診(パップテスト)は、21〜65歳の女性に対し3年ごとの実施で死亡率を減らすことが証明されています。
近年はHPV検査との併用も有効性が確認されています。
ワクチン接種と検診を組み合わせることで、予防効果はさらに高まります。
⑤ 乳がん
マンモグラフィ検査は、40歳以上の女性で死亡率減少効果があります。
2年ごとの実施が推奨されています。
若い世代では乳腺が密で見えにくく、超音波検査やMRIとの併用もありますが、死亡率減少効果は確立していません。
その他のがんについて
最近、膵臓がんの検診について質問を受けることがありますが、残念ながら効果が証明されている方法はありません。
テレビやSNSで“効果がありそう”と宣伝される検診もありますが、科学的根拠がないことを理解したうえで受けるかを判断してください。
検診との正しい付き合い方は
• 科学的根拠のある検診を、適切な年齢・間隔で受ける
• 検査には見逃しや過剰診断の可能性があることを理解する
• 検診結果に応じて、適切な精密検査・治療を受ける
ーーーがん検診は「安心のため」だけでなく、「命を守るため」の医学的ツールです。
根拠に基づいた正しい受け方で、その効果を最大限に生かしましょう。ーーー





















