今年も桜が美しい季節が廻りました。鎌倉の山肌に点々と咲く山桜は、見飽きることがない美しさです。ですが私は、道の両脇に等間隔に植えらえた街路樹の桜並木を見ると、何か違和感を感じることがあります。これは「ゆらぎ」理論に関係あるのではないかと思い、「ゆらぎ」について考えてみました。
「ゆらぎ」とは、理学博士の佐治晴夫先生が提唱する宇宙の始まりに関わる理論です。規則性がありながらもそのパターンが必ずしも一定ではなく、変化していく現象のことを指します。質や量が一定ではなく、時間が経つにつれて強くなったり弱くなったり、または大きくなったり小さくなったりというような現象です。
この「ゆらぎ」は私達の身の回りに溢れています。例えば、星の光は一定でなくキラキラ瞬いていたり、ろうそくの炎が直線的ではなくユラユラ揺れていたり、風は吹いたり止まったり、潮の満ち引きや、木の年輪なども、身近な自然にみられる「ゆらぎ」の一種です。そして、私達の脳は、「ゆらぎ」の刺激を受けると脳自身の「ゆらぎ(α波)」と呼応して心地良い、美しいと感じるのだそうです。これが、街路樹と自生の桜を見た時の感覚の違いの正体かもしれません。
また、健康な人の脳波や心拍の変動は、自然界の「ゆらぎ」に近いことがわかっています。私は、長年病院で働いてきて、何千人の心電図や呼吸や血圧の波形を観察してきました。それらの波形に変化があると、「血圧低下!」とか「不整脈です!」となり、治療がはじまるわけですが、その様な大きな変化の前には、それより小さな変化の兆しがあって、それを見逃さないと、症状の悪化を最小限に防げると経験的に感じています。もしかしたら、それは「ゆらぎ」の変化をみているのかもしれません。「怪しい雲行き」なんて言いますが、一見正常だけれど変化の兆候が見え始めている時期。「ゆらぎ」を見ていくと、そんなこともわかるのではないかと思いました。
そう考えると、予防医学ともいわれるオステオパシーは、「ゆらぎ」の領域を扱っている様に感じます。まだ病気ではない小さな変化を扱うからです。また、オステオパシーでは、呼吸、血圧、心電図や脳波以外にも生体には「ゆらぎ」の様な振幅があると考えています。施術の中で、様々な「ゆらぎ」をとらえることは、交感神経を静め免疫力を上げることに役立つかもしれません。また、オシレーション(=揺動)というテクニックでは、その人のリズムに合わせて身体を揺らし、物理的に「ゆらぎ」を作り出す事で、緊張をとったり、関節可動域や循環を改善させることをします。宇宙理論の「ゆらぎ」を考える内に、オステオパシーの施術にたどり着きました。「人体は宇宙だ」とはよくいったものです。
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