熱中症とは、高温多湿な環境で長時間過ごすことにより、次第に体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなってしまったために現れるさまざまな症状の総称です。汗をかいたり、十分な水分・塩分量を補給できていなかったりすると体内の水分量が減少した状態になります。これが脱水症です。脱水症がさらに進行すると熱中症になります。
消防庁が発表した平成30年夏期(5~9月)の熱中症による救急搬送人数は実に9万人以上にのぼり、うち150人以上の人が命を落としています。
熱中症は軽度の熱失神・熱痙攣、中等度の熱疲労、および重症の熱射病に分類されます。
<熱中症の分類>
熱失神
炎天下にじっと立っていたり、立ち上がったりした時や運動後などにおこります。皮膚の血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下し、脳の血液量が減少し、めまいや失神が起きます。足を高くして寝かせると通常はすぐに回復します。
熱痙攣
大量の汗をかいたにもかかわらず塩分摂取せず水だけを補給したときに起こります。血液中の塩分濃度が下がるのが原因です。手足の筋肉だけでなく腹筋などにも痛みを伴った痙攣がみられます。
熱疲労
脱水に加えて、発汗による熱の放出が追いつかなくなり、二次的に循環機能が障害された状態です。症状は、激しい喉の渇き、尿量の減少、倦怠感、気分不良、頭痛、めまい、嘔吐などで、放置すると熱射病に移行します。
熱射病
脳の体温調節機能が障害され、体温が上昇します。皮膚は乾燥・紅潮し、意識障害、不穏な言語・行動、全身痙攣などの症状がみられます。体温は40℃以上になり、進行すると多臓器障害が起こります。 致死率は高く、緊急の治療が必要です。
<熱中症の予防>
体調の管理
睡眠不足や過労、あるいは風邪などで体力がおちている時に無理をしないこと。基礎疾患がある方は主治医の指示に従い加療を続けることが大切です。
水分・塩分補給
こまめな水分摂取と塩分の補給が必要です。のどが渇く前に意識してこまめに水を飲むようにしましょう。スポーツドリンクは摂取カロリーが多くならないように少し薄めて飲むようにするのがよいでしょう。
<熱中症の応急手当>
「いかに早く体温を下げるか」がポイントです。
休息
涼しい場所で休ませ、安静に保ちます。衣服は必要に応じて脱がせ、体を冷却しやすい状態にします。
冷却
衣類をできるだけ脱がせて、体に水をふきかけます。皮膚の血流が悪くならないように、使用する水は冷たいものよりも常温の水もしくはぬるま湯を用い、手足と体幹部をマッサージします。氷嚢、アイスパック、アイスノンなどを、両腕の腋の下、首の横、股の間にあてて血液を冷却します。
水分補給
意識がはっきりしている場合に限り、水分補給をおこないます。水分はスポーツドリンクに限らず適度の塩分と糖分が必要で、コップ1杯の水に一つまみ塩と五つまみの砂糖で代用できます。
意識障害がある場合や吐き気・嘔吐がある場合には、無理に水分補給をせず医療機関での輸液が必要です。
熱中症は重度の場合は死に至ることもありますが、予防が可能な疾患であり「無知と無理から生まれる」といわれます。こまめな休憩と十分な水分及び塩分の補給を心がけて、日頃の体調管理に気をつけてください。