新型コロナウイルス蔓延のためマスクでの生活を余儀なくされていますが、高温多湿でマスクをつけていると、内側に熱気や湿気がこもりやすいため、気づかないうちに体温上昇や脱水を引き起こします。
人間の体内にある水分は体重の55~60%といわれており、水分は生命維持に欠かせません。しかし、汗をかいたり、十分な水分・塩分量を補給できていなかったりすると体内の水分量が減少した状態になります。これが脱水症です。体から水分が1%損失すると、のどの渇きを自覚します。2%の損失ではめまいや吐き気、食欲減退などが現れます。そして10~12%の損失では筋けいれん、失神、20%の損失では生命の危機になり、死に至ります。体がだるい、食欲がない、やる気がわかないなど、何となく体調不良が続く時は、軽度の脱水症になっている可能性があります。
水分補給を行わず、さらに脱水症が進行すると熱中症になります。熱中症は軽度の熱失神・熱痙攣、中等度の熱疲労、および重症の熱射病に分類されます。
<熱中症の分類>
熱失神
炎天下にじっと立っていたり、立ち上がったりした時や運動後などにおこります。皮膚の血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下し、脳の血液量が減少し、めまいや失神が起きます。足を高くして寝かせると通常はすぐに回復します。
熱痙攣
大量の汗をかいたにもかかわらず塩分摂取せず水だけを補給したときに起こります。血液中の塩分濃度が下がるのが原因です。手足の筋肉だけでなく腹筋などにも痛みを伴った痙攣がみられます。
熱疲労
脱水に加えて、発汗による熱の放出が追いつかなくなり、二次的に循環機能が障害された状態です。症状は、激しい喉の渇き、尿量の減少、倦怠感、気分不良、頭痛、めまい、嘔吐などで、放置すると熱射病に移行します。
熱射病
脳の体温調節機能が障害され、体温が上昇します。皮膚は乾燥・紅潮し、意識障害、不穏な言語・行動、全身痙攣などの症状がみられます。体温は40℃以上になり、進行すると多臓器障害が起こります。 致死率は高く、緊急の治療が必要です。
脱水症の予防には、こまめな水分摂取と塩分の補給が必要です。理想的な水分の組成としては、0.1~0.2%の塩分(ナトリウムが40~80mg/100ml)と糖分を含んだものです。のどが渇く前に意識してこまめに十分な水分摂取と塩分の補給を心がけてください。また、高温多湿の環境下でのマスク着用は、脱水症や熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにしましょう。マスクを着用する場合には、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がけましょう。