健康診断や人間ドックで、たびたび貧血を指摘されることはないでしょうか? 女性は1~2割の方が貧血であるともいわれ、貧血は大変身近な病気です。しかしながら貧血のことが軽く考えられがちです。
貧血とは
ある一定量の血液の中に含まれる赤血球、またはヘモグロビンが正常値以下に減少した状態を貧血といいます。ヘモグロビンはヘムとグロビンからなる複合タンパク質で、ヘムの中に鉄が含まれています。赤血球中のヘモグロビンが全身に酸素を運ぶ働きをしています。ヘモグロビンが減少すると全身が酸素不足になり、易疲労感、動悸、息切れ、立ちくらみ、頭痛などの症状があらわれます。
急に立ち上がったり、長時間立ち続けたりした場合に、立ちくらみやめまいを起こすとよく「貧血をおこした」といいますが、これは「貧血」ではなく「起立性低血圧」といいます。座った状態から急に立ち上がることで血液が下肢にたまり、脳が一時的に血液不足による酸欠状態になり、めまい、立ちくらみといった症状が起こります。
貧血の原因と貧血をきたす疾患
貧血の原因は大きく以下の3つに分けることができます。
① 骨髄で赤血球の生産量が低下している場合
② 何らかの理由で赤血球が破壊されている場合
③体内のどこかで持続的に出血が起きている場合
①赤血球は骨髄(血球の工場)で造血幹細胞から造られますが、赤血球の材料となる鉄分のほかタンパク質やビタミンB12、葉酸などが不足しても、貧血になります。また骨髄に異常があり赤血球の産生ができない再生不良性貧血、白血病などもこれにあてはまります。
②の赤血球が破壊されている場合を溶血といい、やけどや蛇の毒、溶血性貧血などの自己免疫性疾患によって起こります。また、マラソンなどの運動による足裏への反復衝撃によって、血管内の赤血球が破壊され貧血になる事もあります。
③は、出血が続くことで、気がつかないうちに貧血が進行します。女性に特有のものには過多月経や子宮筋腫、男女共通のものでは胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんや大腸がん、痔核など消化管からの出血があげられます。
バランスの取れた食事をしているにもかかわらず貧血がある場合は、何らかの病気がかくれている可能性があります。貧血を指摘された場合は、栄養の改善だけでなく出血性の病気がないか、原因をつきとめることが重要です。