全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症。感染症はこれまでも幾度となく人類に甚大な影響を与えてきました。感染症の原因となる病原体には主に細菌とウイルス(その他、寄生虫、真菌、およびプリオンなど)がありますが、細菌とウイルスをひとくくりに考えている方が多いようです。今回、細菌とウイルスの違いについてお話します。
細菌とウイルスの違い
細菌の大きさは通常1mmの1/1000の単位、μm(マイクロメートル)が用いられます。細菌は光学顕微鏡で見ることができます。一方、ウイルスの大きさは細菌よりもはるかに小さく、μmの更に1/1000の単位、nm(ナノメートル)が用いられます。ウイルスを見るには電子顕微鏡が必要です。ウイルスの大きさが10~100nmに対して、細菌の大きさは1~10μmと細菌の大きさはウイルスの100~1000倍です。
細菌は、それ自体がひとつの細胞で、自己増殖能力を持っています。細菌にとって都合の良い温度・湿度などの条件が整うと分裂し、数を増やしていきます。ウイルスは、蛋白質の殻と内部に遺伝子を持っただけの(細胞の核だけのような)単純な構造をしています。遺伝子だけの構造のため、自力で増殖することができません。ウイルスは生きている細胞に侵入し、感染した細胞の力を利用して増殖します。
細菌には抗生物質が有効ですが、ウイルスに対してはインフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど、ごく一部のウイルスに対する抗ウイルス薬(ウイルスの増殖をおさえる薬)しかありません。
細菌は高温多湿の環境を好みます。この時期になると細菌が原因の食中毒が多くなります。手指・調理器具類の洗浄・消毒や、食品の保存方法に注意し、調理は迅速にし、調理後は早く食べましょう。 一方、ウイルスは高温多湿の環境に弱く、寿命が短くなります。実験によると、ステンレスやプラスチックの表面に存在する新型コロナウイルスは、気温21~24℃、湿度20%の環境では半減期(ウイルス量が半分になるまでにかかる時間)が18時間です。ところが湿度が80%に上昇すると、半減期は6時間に減少し、更に太陽光が加わると半減期はわずか2分になるそうです。
夏の時期にはウイルス感染症は減ることが期待されますが、新型コロナウイルスが根絶されたわけではなく、寒くなり始める頃から感染者が増加することが危惧されます。引き続き、感染予防の継続は必要です。