糖尿病は血管性認知症だけでなくアルツハイマー病の発症頻度を約2倍に増加させます。原因として不十分な血糖コントロール(食後高血糖、低血糖、極端な血糖変動等)、インスリン抵抗性、動脈硬化等が関係しています。認知症患者数の急増を抑制するためにも糖尿病の管理は重要です。
血糖管理に関しては食後高血糖、血糖変動を抑制することが重要ですが、高齢者や認知症を合併している場合には低血糖の危険性を考慮する必要があります。一般的には糖質の過剰摂取を控え、咀嚼(噛む)回数を増やしてゆっくり食事すること、食事の順序に留意し、野菜を摂取した後に炭水化物を摂取すること(ベジタブルファースト)等を実践することで食後血糖値の上昇を抑制することが重要です。
また、低血糖は脳に対して重大なダメージをきたしやすく、低血糖発作回数が増えるほど認知症を発症する危険性が増加します。また高齢者でフレイルを有している例では低血糖が転倒・骨折の原因になりやすいので注意が必要です。
(フレイル;加齢に伴いストレスに対する脆弱性が進み、生活機能障害、要介護状態に陥りやすい状態)
認知症の患者さんは糖尿病の有無にかかわらず、さまざまな食行動異常がみられ、炭水化物や甘いものを好む一方、緑黄色野菜や魚・肉の摂取が少なく、ビタミンB群、葉酸、抗酸化ビタミン、ミネラル、タンパク質が不足しています。またエネルギー(カロリー)不足による痩せも認められます。したがって、単にエネルギーを制限するよりもバランスを重視する事が大切です。
では具体的な対策として地中海食、糖質制限食などがあります。地中海食は広く知られるようになりましたが、野菜、果物、ナッツ類、魚、オリーブオイル等を多く摂取する一方、乳製品や肉類を控え、赤ワインを適量摂取する「地中海式食事」がアルツハイマー病の発症を抑制することが報告されています。果物やワインには果糖が含まれていますので、あくまでも適量摂取がポイントです。糖質制限については総摂取エネルギーに占める炭水化物の割合は55~65%が望ましいと考えられています。
日常生活に欠かせない食事の摂り方もほんの少し工夫する事で体調管理に役立ちます。食事の摂り方、作り方について栄養学のスペシャリストである管理栄養士から一度、指導を受けてみては如何でしょうか?