最近色々な分野で話題のAI(人工知能)ですが、いよいよ私たち日常の診療現場にも入って来ました。丁度一年前のクリニック新聞に、やがて日常診療にこのAIが導入されて来るであろうという記事を書きました。その時はまだ、大きな特定の病院で抗がん剤の選択等にAIを利用するという、少し特殊な状況での使用に留まっていました。
今回AIが導入されたのは、内視鏡検査の見落とし予防と悪性度評価に関してです。
通常の内視鏡検査は内視鏡検査医が目で見て診断します。言わば内視鏡医の経験と能力によって診断しているのです。誰が見ても明らかな病変であれば問題ありませんが、小さな病変でわずかな変化しか示していない病変の場合には、その内視鏡医の診断能力により診断結果が分かれる事があります。したがって、経験の浅い内視鏡医や、その能力によっては時に見逃してしまう事も起こり得ます。AIを内視鏡診断に利用すると、内視鏡医がうっかりと見逃した病変をマークで教えてくれるというシステムです。現時点では色々な病変にマークが付いてしまい、検査が滞ってしまうという状況のようですが、近い将来には当たり前のように利用されると思います。
もう一つのAIは、内視鏡の画面上の病変が悪性か良性かをパーセンテージで教えてくれる装置です。現時点では、怪しい病変は組織を採って顕微鏡で見て診断するという流れです。そのAIを利用すると、悪性か良性かあらかじめ知ることが出来るというメリットがあります。これまでの内視鏡医の経験と病理検査に頼っていた時代から、組織検査という手間をかけずにガンの診断が出来る時代へと変わって行くでしょう。これらの内視鏡検査に利用されるAIは、今後その精度と有益性を検討した上で、私達の施設でも導入を検討していきたいと考えています。
このようにAIは私達の診療の中に今後どんどん入って来ます。これまで当然のように行われていた医師の問診や診察、そして診断をつけてから治療薬の処方、という診療の流れが全く変わろうとしています。英国や米国では診療アプリが利用され、あらかじめ自分の症状と状態を入れる事により緊急性の有無を知ることが出来、医療にかかる時間とコストを削ることが出来ているようです。
日本でも、比較的安価で病気に関しての質問をメールで受けつけるサービスがあります。今後は、AIが問診をして、可能性のある診断名を告げ、治療や緊急性の有無に関しての指示を出す時代になるのでしょう。