人間の体内にある水分は体重の55~60%といわれており、水分は生命維持に欠かせません。体内の水分には以下のはたらきがあります。
1.体温調節をする。
2.必要な栄養素や酸素を体全体に運ぶ。
3.体内の老廃物を体外へ排出する。
気温が上昇すると、血管が拡張したり、発汗したりすることで体温を調節しています。しかし、体内の水分が不足すると、上手く体温が調節できなくなります。体温調節機能が追いつかなくなると、脱水や塩分の不足から体温の上昇が起こり、その結果、めまい・けいれん・吐き気・意識障害・頭痛など、さまざまな症状が出現します。これが熱中症です。熱中症は軽度の熱失神・熱痙攣、中等度の熱疲労、および重症の熱射病に分類されます。
<熱中症の分類>
熱失神
炎天下にじっと立っていたり、立ち上がったりした時や運動後などにおこります。皮膚の血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下し、脳の血液量が減少し、めまいや失神が起きます。足を高くして寝かせると通常はすぐに回復します。
熱痙攣
大量の汗をかいたにもかかわらず塩分摂取せず水だけを補給したときに起こります。血液中の塩分濃度が下がるのが原因です。手足の筋肉だけでなく腹筋などにも痛みを伴った痙攣がみられます。
熱疲労
脱水に加えて、発汗による熱の放出が追いつかなくなり、二次的に循環機能が障害された状態です。症状は、激しい喉の渇き、尿量の減少、倦怠感、気分不良、頭痛、めまい、嘔吐などで、放置すると熱射病に移行します。
熱射病
脳の体温調節機能が障害され、体温が上昇します。皮膚は乾燥・紅潮し、意識障害、不穏な言語・行動、全身痙攣などの症状がみられます。体温は40℃以上になり、進行すると多臓器障害が起こります。 致死率は高く、緊急の治療が必要です。また、体内の水分が不足すると血液の水分が不足し、血液の流れが悪くなります。その結果、心筋梗塞や脳梗塞が発症しやすくなります。夏の暑い盛りに全身倦怠感を訴える方の中には熱中症以外にも心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病の悪化などがまぎれていることがあります。
脱水の予防には、こまめな水分摂取と塩分の補給が必要です。理想的な水分の組成としては、0.1~0.2%の塩分(ナトリウムが40~80mg/100ml)と糖分を含んだものです。特に運動をするときは、4~8%の糖分を含んだものが有効です。のどが渇く前に意識してこまめに十分な水分摂取を心がけてください。