「病気の治し方」 小尾龍右

  私が東洋医学を学ぶことを志した理由のひとつに、15年にわたる姉の気管支喘息が1年間の漢方薬の服用で完治したことがあります。家族として姉の喘息治療をみていて、西洋医学は究極の対症療法だと悟りました。発作があれば吸入や点滴をしておさめる。発作が出ないように予防薬を吸入する、薬を飲む。こういう治療が瀕死の患者を救命し、苦痛から解放したことは明白です。しかし、何年治療を続けたら病気が完治して薬が不要になるのかは予想できません。


 こういう病気は現代には多くあります。アトピー性皮膚炎、膠原病、潰瘍性大腸炎などの難病はもちろん、高血圧、糖尿病などの生活習慣病もそうです。ある糖尿病専門医が私に話してくれたエピソードがあります。患者さんから「先生のいうとおりずっと糖尿病の薬を飲んできたが、何年たっても糖尿病が治らないじゃないか!」とおしかりを受けたというのです。血糖値を下げる薬はあるが、糖尿病を完治させる治療はない。これが、西洋医学が究極の対症療法だと考えるゆえんです。一般に医師は糖尿病などの生活習慣病は一生治療を続けなければならない病気と考えています。しかし、患者さんは完治して薬が不要な体になりたいと考えています。なぜ、このような考え方の違いがうまれるのでしょうか?

 
 それは、西洋医学では目の前の症状を早く改善することを優先して薬が作られているからです。したがって、対症療法ばかりで、iPS細胞から人工膵臓を作成して糖尿病を完治させるといった根本治療はまだまだ先の話なので、現状では薬物治療で病気を抑え続けるしかないのです。誤解を生んではいけませんので説明しますが、いまある症状を改善しようという地道な積み重ねがあって、国民医療が向上してきたのであり、西洋医学を否定するものではありません。しかし、対症療法的な考え方の積み重ねの延長に根本治療、ひいては患者さんの幸福が見えてこないという現実もまたあるのです。


 たとえば風邪薬ですが、中に入っている成分はすべて対症療法の成分です。風邪はRSウイルス、ライノウイルス、アデノウイルスといったウイルス感染症です。しかし、風邪薬に抗ウイルス薬は入っていません。ウイルスですから、抗生物質も効果がありません。よく、「風邪薬をのんでも風邪が治りません」という声を聞きます。それは、風邪薬に根本的にウイルスを除去する効果がないのですから、当然と言えば当然なのです。ここにも対症療法の延長では根本治療が生まれない現実があります。ちなみに風邪を治しているのは皆さんの自己治癒力です。体のなかにいるマクロファージやリンパ球という免疫を担当する細胞がウイルスを除去し、傷ついた咽喉や気管支の粘膜は自己再生力で体内の栄養分を動員して修復しているのです。


 では、東洋医学ではどうでしょうか。東洋医学では「標治」「本治」という言葉があります。「標治」とは急性症状を改善することを目的とした治療、つまり対症療法です。「本治」とは根本治療を意味します。東洋医学が西洋医学と大きく違うのは、「標治」をしているようで同時に「本治」を常に意識しているということです。たとえば、風邪薬として有名な葛根湯ですがこのなかには葛根・麻黄・桂枝・芍薬・甘草・生姜・大棗という七種類の薬草が入っています。葛根・麻黄・桂枝・芍薬は鼻閉、関節痛、頭痛、発熱などの急性症状を取るための薬効をもっていますが、甘草・生姜・大棗は何をしているのでしょうか。これらは自己治癒力を高める効能をもっています。つまり「標治」の成分と、「本治」の成分が一緒にはいっているのです。この考え方はどんな漢方薬を選択するかに適応するだけでなく、病気に対する姿勢にも及びます。もちろん、東洋医学は万能医学ではなく治せない病気もたくさんありますが、多くの慢性病に東洋医学が役立っていることからすれば、この考え方は馬鹿に出来ないと思います。


 ここで、タイトルの病気の治し方にもどります。つまり、病気を根本的に治すには患者さん自身の治癒力を高めることが重要であるということです。対症的な治療、たとえば降圧剤や血糖降下剤などを服用することはもちろん大切ですが、御自分の食事・生活習慣の改善はもっと大切です。そして、病気は敵対するものではなく、自分自身の弱いところが出たと考えてください。誰もが弱点をもっています。その弱点を克服するために努力、精進するところに人間の価値があると思います。
 

 潰瘍性大腸炎という腸の難病があります。ある潰瘍性大腸炎の患者さんはいっさいの西洋医学的治療を拒否され、食事療法と漢方薬だけで改善しました。現代の医学では説明がつかないことですが、これは事実です。このように患者さん自身の努力がうれしい結果に結びつくこともあるのです。一方で残念ながら努力をしても良い結果に結びつかず、むしろ病気が悪化してしまい、亡くなる患者さんもおられます。医師としては明らかに無謀と思われる挑戦をする患者さんがいたら当然、諌めます。しかし、どういう治療を受けるかを自分で決断して、それにむかって努力する生き方を選んだ人のほうが(賛否両論はあると思いますが)、充実した人生を送ったと言えるのではないでしょうか。


 病気の治療は「標治」だけでなく、「本治」を目指して御自分の体に向き合い、どうすれば体が喜んでくれるかを考えながら、自分の治癒力を高めるという意識を持って、医療者と協力して治療にあたっていただきたいと思います。 (小尾龍右)

「サプリメントのお勧め」 柳川健

 皆さんはサプリメントを摂っていますか。私は約5年間、ほぼ毎日各種ビタミンをはじめとする数種類のサプリメントを摂取しています。なぜサプリメントを摂るようになったかというと、ちょっとした事がきっかけでした。

私は開業して3,4年経った頃から疲労感を強く感じるようになり、夕方になると体が沈むように疲れるようになりました。睡眠を十分にとっても改善せず、血液検査等でも異常はなく、どうしたものかと考えていました。ちょうどその頃、私の家内は友人から勧められた総合ビタミン剤を時々飲んでいましたので、私も試しに服用してみたのです。すると驚いたことに、1週間くらい服用すると、これまでの疲れが嘘のように感じなくなったのです。そのことをきっかけにビタミンやミネラルを補給するというサプリメント療法に興味を持ったのです。

私がサプリメントを摂り出した頃に、抗加齢医学会の存在を知り、さっそく会員となって勉強を始めました。抗加齢医学の中ではサプリメント療法は常識であり、私もある程度の根拠を持ってサプリメントの量と種類を選んで服用するようになりました。そして現在では、患者さんをはじめ多くの方にサプリメントを上手に摂ることによって健康を維持増進されるようにお勧めしています。

サプリメントをなぜ服用すると良いのか。それは食事では十分量のビタミンやミネラルを補給することができないからです。ビタミンやミネラルは体内で起こる様々な反応に必要不可欠であり、その不足から色々な病的状態が生じます。また、私たちの体が老化していくのは、体内に酸化物質が蓄積されるためであるという有力な説があります。このため、体の酸化を抑えるような働きのあるビタミンなどを摂取することは、老化を予防し健康状態を維持することに役立つと考えられています。

よく患者さんから、どういったサプリメントを摂ったら良いかという質問をお受けします。その場合に私がお聞きすることは、なぜサプリメントを使いたいと思ったのか、つまりサプリメントを摂ることによって何を得たいと考えているかということです。

たとえば、疲労感が強くて色々な検査を受けても特に異常がない方が、その疲れを少しでも軽くしたいという場合、まずお勧めしたいのはビタミンB群とコエンザイムQ10です。特にコエンザイムQ10は体内でエネルギー産生に関わる重要な補酵素であり、同時に抗酸化力が強いため老化予防にも有用と考えられており、若々しく元気でいたいという方には必須のサプリメントであると考えています。

また、最近はテレビなどでも動脈硬化のことが話題になっていますが、動脈硬化を予防し、脳梗塞や心筋梗塞を予防したいという方には、いわし油として有名なEPAをお勧めします。単独で摂取するよりもDHAとの配合剤で服用した方が良いです。服用して自覚症状が何か変わるわけではありませんが、動脈硬化性疾患(脳卒中や心筋梗塞)の予防に関してはしっかりした医学的根拠のあるサプリメントです。

テレビ番組である種のサプリメントが体に良いと取り上げられると、一時的なブームでそのサプリメントが売れることがあります。そうした流行に乗るようなサプリメントの摂り方はお勧めできません。自分にとって必要なサプリメントを知り、目的を持ってサプリメントを上手に使っていくことが大切であると私は考えています。

当院の2階にある「メディカルスパ西鎌倉」には、私が皆さんにお勧めしたいサプリメントを取り揃えています。あまりにも種類が多くてどれを使ったら良いのか分らないと言われることがあります。少し服用例をお示しします。

特に病気がなく、一般的な健康維持と老化予防のためにサプリメントを摂りたい方(私もその一人です)には、ナチュメディカ「ナチュバイタル」「ミルチカラ」「コエンザイムQ10」の3種類をお勧めします。

ナチュバイタルはいわゆる総合ビタミン剤にミネラルが入っています。「ミルチカラ」は目と神経に良いと言われる成分が入っており、老眼予防と認知症予防あるいは改善に有効です。コエンザイムQ10は先ほどお話ししたようにエネルギー産生を促し、老化を予防します。総合ビタミン剤として、ダグラスラボラトリー社のものを数種類揃えてありますので、必要に応じて変えていただけます。

また、上記以外にも服用する余裕のある方には、「DHAEPA1000」をお勧めします。DHAはカツオ油、EPAはイワシ油であり、認知症と動脈硬化予防に有効です。当院にて頸動脈エコー上動脈硬化や血栓がみられる人にはこの製剤をお勧めしています。

また、近年著しく増加している大腸癌を予防したいという方には、ラクトフェリンをお勧めします。抗ウイルス効果、免疫力増強効果、疼痛緩和効果など様々な効用が分かっている製剤です。

最後に、現在私が服用しているサプリメントを解説します。先にお話しした3種類「ナチュバイタル」「ミルチカラ」「コエンザイムQ10」と「DHAEPA1000」「ラクトフェリン」はすべて服用しています。他に、ストレスと疲労感解消のため「VB100」,ダグラスラボラトリーの「レスベラゴールド」を服用しています。VB100はビタミンB群だけ集めたもので、疲れやすい人などには特にお勧めです。また「レスベラゴールド」はレスベラトロール製剤であり、数年前に米国ハーバード大から発表された「不老長寿の薬」ともいえる製剤です。これは赤ワイン中のポリフェノール中の成分であり、肥満マウスに投与すると寿命が倍近く伸びたことで注目を集めている物質です。人間の寿命を延ばすかは不明ですが、私は120歳まで生き延びようとしているので、その効果を信じて服用しています。

皆さんもぜひサプリメントを上手に使って健康で長寿を実現して下さい。 人に自分の考えや気持ちを伝えること。あるいは人の考えや気持ちを知ること。それがコミュニケーションです。毎日、その瞬間ごとにしていることですが、このコミュニケーションがなかなか難しいと感じることはありませんか。

大腸がんの8割は予防できる

50歳以上の方でまだ一度も大腸の内視鏡検査をお受けになったことがないという方は、すぐに検査をお受けください。便潜血検査を受けて安心している、という方が多いのですが、毎年陰性であった方が下血され、検査を受けたら、進行性大腸がんであったということもあります。

まだがんになっていないポリープがあっても便潜血反応が陰性になることは珍しくありません。便潜血反応が陰性だからと言って安心してはいけません。

 

ポリープを早期に発見

大腸がんの8割は大腸ポリープが成長することによって発生すると考えられています。このポリープが、がんになるまでには通常15年以上の時間がかかるといわれています。たとえば60歳で大腸がんが見つかった人はすでに40歳の時にはポリープがあった可能性が高いのです。がんになる前のポリープ段階であれば内視鏡で比較的安全に切除することができますし、その事が大腸がんの発生を予防することになります。特に、肉親の方で大腸がんになった人がいる場合には40歳からの定期的な大腸内視鏡検査をお勧めします。

 

予防できるがん

大腸内視鏡検査は苦痛を伴うのではないかと敬遠する方が多いのですが、熟練した内視鏡医が行えばほとんど苦痛はありません。むしろ検査準備の為の下剤を服用することが辛いという患者さんが多いです。その下剤も最近では新しいタイプのものが開発され、錠剤を水やお茶で飲むものもありますので、ご相談ください。

日本人女性のがん罹患数(がんになる人の数)、死亡数ともに第1位の大腸がんは8割以上が、「予防できるがん」だということを、改めて認識していただきたいと思います。

「生涯現役の人生」 柳川健

 私には退職はありません。いくつになっても医師としての仕事を続けていく と決めたのです。 100歳まで現役の医師として生きていくこと。 これが私の人生における目標です。もちろん、現在のように朝7時半から夜8 時過ぎまで、ほとんど休憩も取らずに働き続けることは無理ですから、年齢 に応じて働く時間やペ―スを変えていきます。という私も、以前は違う考え を持っていました。60歳位まで一生懸命働いて、残りの余生はのんびりと本 を読んだり旅行をしたり、自分の楽しみのために時間を使おうと思っていた のです。

どうして生涯現役の人生を決意したのか。いくつかの理由がありますが、その中でも一番大きい影響を与えたのは、抗加齢医学との出会いであったと思います。今から4、5年前に抗加齢医学という分野を勉強する機会に恵まれ、米国やフランスにも勉強に行きました。抗加齢、つまりいかにして年を取らないようにするか。

基本は生活習慣を健康的なものにして肥満を予防すること。そしてサプリメントによる抗酸化療法を行い、ホルモン補充など年をとると足りなくなってくる体内物質を補うというものです。しかし、勉強すればするほど、そして超高齢といわれるまで元気に過ごしている人を知れば知るほど、ひとつの事実に気づいたのです。それは、いくつになっても好奇心を失わず、前向きに生きていこうとする気概を持っているということが一番大切なことであるということだったのです。

つまり、常に前向きに積極的に生きていこうという気持ちを持つことが一番の老化予防であり長生きの秘訣だということに気づいたのです。そして、その基本的な考え方は、他人のために生きることにあると思います。

先日もある80歳代の患者さんから診察室でお話をお聞きしました。その方のお姑さんは7年前に110歳で亡くなったそうですが、103歳まで子供達を集めて英語を教えていたそうです。「人は生きている限り何か人様のお役に立たなければならない」その方の口癖だったそうです。

他人の役に立つように積極的に人生を生きていく。これこそが最大の抗加齢 であると私は考えています。

私は医師であり、柳川クリニックの院長という立場を社会の中で担っています。その立場から社会貢献していくこと、みなさんの喜んでいただけるような医療を実践していくことが私に与えられた使命です。現在44歳である私が皆さんに提供できるものは、10年後、20年後、30年後と変化していくことはあるでしょう。しかし、どの時点でも常に前向きに積極的にみなさんのお役に立てる医療を実践していきます。

生涯現役で働いていくためには毎日の努力が必要であると考えます。早寝早起き、腹八分、適度な運動とストレス発散など、しなければならないことはたくさんあります。日々の生活習慣を怠っていては、どんなに良いサプリメントを摂っていても体は弱っていくでしょうし、高血圧や高脂血症などの病気になってしまうでしょう。

私が生涯現役を実行するために現在何をしているのか、そして今後何をしな ければならないのか。生活習慣の中では、夜は12時前に寝て朝は6時頃起き ますので、睡眠時間は約6時間くらいです。7時間が理想と言われていますの で、できれば11時には横になりたいとは考えています。現在仕事が終了する のが、8時半くらいになりますので、その後帰宅しして食事を摂って、とし ているうちに時間が経ってしまっています。朝は7時半から仕事を始めていま すので、今後は夜仕事を早めに終了する方向に持っていくことを考えていま す。食事は、朝は軽く昼は2階で野菜中心の食事です。夜は普通に食べます が、炭水化物は少なめにするように考えています。ほぼ実践できています。

問題は運動です。運動しなければいけないとは常に考えていますが、なかなか実践できていません。テニスは週に1回あるのですが、仕事が遅くなり行けないことが多いのが現状です。夕食後に30分以上歩くことを患者さんには勧めているのですが、自分自身は疲れてしまって実行できていないのが最近の実態です。

サプリメントを摂ることによって、不足しがちな栄養素を補い、また体内の酸化を予防するようにしています。ビタミンABCDE、イチョウ葉、コエンザイムQ10、アルファリポ酸、レスベラトロールなどを毎日摂取しています。

特に今年の冬は、風邪予防のためにオリーブ葉を新たに加えてみました。サプリメントを摂るようになって4年位になりますが、疲労感が減ったことは確かであると感じています。

ストレス管理もとても重要です。もともと好きな仕事ですので、仕事そのものにストレスはありませんが、やはり長時間同じ場所で働いているとストレスが溜まってくるのも事実です。しかも何週間ものんびり過ごすことがないと、だんだん気力も低下してくるのがわかります。やはり1週間に1日はのんびりと過ごすことが大切であると思います。最近ゴルフを始めましたので、週に1回、せめて2週間に1回くらいは練習場に行き、2、3カ月に1回くらいはコースに行きたいと思います。

高齢になっても現役で働こうと考えると、現在の生活をしっかりと管理しなければいけないと強く感じます。もちろん、結果がどうなるのかは誰も知ることはできませんが、信じて日々実践していくことが大切なのだと思います。

老化を予防したいというのはみなさん共通の願望です。最も効果的な方法は、生涯現役でありたいという願望のもとに日々の生活を健康的に送ることだと思います。みなさんも是非、何を生涯現役で実行し、そのために今日から何をするのかを考えてみてはいかがでしょうか。

みなとみらいケンズクリニックオープン

本日5月5日午前10時
みなとみらいケンズクリニック初日がオープンしました。

職員一丸となって準備を進めてきての初日ですから
ちょっぴり不安はあったものの楽しみでした。
平成10年の「柳川クリニック」初日とは違って静かな幕開けでしたが、
午前中のみで13人の患者さんにお越しいただきました。
初めての患者さんばかりですから、
こちらも新鮮な気持ちで少々緊張しましたが、
みなさん満足してお帰り頂けたと思います。

たくさんの方からお花や電報などのお祝いを頂き、
大変ありがたい気持ちで一杯です。
この場を借りてお礼を申し上げます。

みなとみらいという鎌倉に比べると賑やかな所で始めた
二つ目のクリニック「みなとみらいケンズクリニック」が
今後、横浜の人達に愛されるクリニックになることを目指して
みんなで力を合わせてがんばっていきます。

皆様の応援をお願いいたします。
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