苦しくない胃内視鏡検査(胃カメラ) 柳川 健

「胃カメラは苦しいから受けたくない」「以前胃カメラを受けたら苦しかったから二度と受けたくない」そんな話を良く患者さんから耳にします。

 

胃内視鏡検査(胃カメラ)はどうして苦しいのでしょうか?
いくつか理由がありますが、一番多いのは喉の反射が出ることによります。俗に言う「オエッ」というやつです。
この喉の反射を抑えるために一般的に行われているのは喉の麻酔です。
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割位の方は喉麻酔だけで反射は抑えられます。
逆に言うと4割の方は喉麻酔だけでは「オエッ」となって苦しい検査になってしまいます。

 

鎮静薬という「ボー」とする薬を使うとほとんどの患者さんの反射を抑えることが出来ますので、楽な胃内視鏡検査をお受け頂けます。
鎮静薬を使用しない場合には鼻からの胃カメラ(経鼻内視鏡)であればほとんど方の場合に喉の反射が出ない検査が可能です。
しかしながら鼻からの内視鏡は口からの内視鏡に比べてカメラ(内視鏡先端にあるCCDカメラ)の精度が通常の内視鏡よりも劣るため、検査の精度に多少の問題があることも指摘されています。
また鼻出血が起こり耳鼻科を受診しなければならない事もあります。

 

検査後すぐ仕事に行く必要がある方の場合には経鼻内視鏡も「楽な検査」の一つの選択肢にはなりますが、当院では、時間に余裕を持って、鎮静薬を使った従来の口からの内視鏡検査をお勧めしたいと思います。

病は気から? 柳川 健

 昔からの言い伝えやことわざに、時にびっくりすることはありませんか? 私は昔の人はなぜこんなにも真実を見極める力、そしてそれを言葉に残す力があったのだろうと考えることがあります。そんな言葉の中に「病は気から」というものがあります。  
 病は気から。「病」はもちろん病気のことですよね。そして「気」は気持ち、精神のことでしょう。この言葉の解釈は、病気の原因は精神的なところにある。あるいは肉体的な病気の予防も、まずは精神的に健康でなくてはいけない、ということでしょう。もう少し深く考えてみましょう。

 病とは、肉体的あるいは精神的に健康ではない状態のことを指していると考えます。そこにはもちろん自分自身がその状態に気付いている場合と気付いていない場合があります。たとえば、早期胃癌ができていても症状はありません。本人も自分は健康であると思っています。でも病気があることは確かです。内視鏡検査で診断されると、その方は胃癌の「患者」、つまり病人になります。一方、検査などしても何も異常がないのに本人は病気があると自覚している場合もあります。たとえば頭痛がある人は辛く苦しいのですが、CTなどの検査をしても何も異常が見つからないことは珍しくありません。この場合、検査上異常はありませんが、本人にとって病気はあるわけです。このように「病」には本人が自覚しているものとしていないものがあると言えるでしょう。

 「気」とは何でしょうか。広辞苑によると「天地間を満たし、宇宙を構成する基本と考えられるもの。また、その動き」「心の動き・状態・働きを包括的に表す語」と書いてあります。「病は気から」というときの「気」は「心の動きや働き」ということになるでしょうか。つまり、私たちの気の持ちようがあらゆる病をつくるというのが「病は気から」の意味するところであると考えられます。あなたはこの言葉を真実であると思いますか、それとも間違っていると考えますか。

 かなり以前から楽観的な人は悲観的な人よりも癌になりにくいと言われます。楽観的な人はおおらかに過ごすため、交感神経の興奮が抑えられる結果免疫力が高いことが原因ではないかと考えられています。そのことに基づいて、「笑い」による癌治療を行っている医師もいます。そうしたことを考えると、「病は気から」は全く間違っているとは言えないようです。

 いつも前向きな気持ちを持ち続けている人は、外見も健康そうですし元気があります。一方、生きることに消極的で、いつも悪い側面ばかり見ている人は、どことなく不健康そうに見えますよね。やはり、いつも明るい気持ちを持っていた方が病気にはなりにくいと言えるかもしれません。

 では、「病」の状態を「気」で治すことができるのか。私にとってはここのところが最も興味のあるところです。つまり気持の持ちようを変えると病的な状態が治せるのかどうか。ある心理学によれば、本人が持っている自分自身や周囲に対する心の状態、別の言葉で言うならば、色々なことに対してその人の持っている「信念・価値観」「自己認識」を変えることによって「病」は治ることが多い、ということです。

 「信念・価値観」「自己認識」を変えるとはどういうことでしょう。たとえば、家系的に胃癌が多い人の場合、自分自身も最後は胃癌で亡くなるのではないかと考えている人は少なくありません、そして実際にそう考えている人は胃癌になりやすい気がします。胃癌に実際になった時に、親戚や家族が胃癌になってもみんな治っている人の場合には、自分も治ると考えますし、胃癌になった身内がみんな亡くなっていると、自分も治らないと考えやすいものです。たとえ進行癌であり、通常では治りにくい状態であっても、自分も完治すると信じている人は通常、非常に良好な経過をとることが多いのです。

 また、病気が実はその人の「信念・価値観」を示していることがあるようです。病気には誰でもなりたくないのですが、心の深いところで、病気になれば得られるものがあり、無意識的に病気を呼び寄せているということがありそうです。すこし分かりにくい話ですので具体的な例をお話しします。

 あまり家族関係が良くない人がいました。その人が進行性の肺癌と診断され、本人も家族もあわてます。手術をして原発巣(もともとの肺癌のところ)を切除しました。しかしすでに転移が複数個所あり化学療法をすることになりました。本人は化学療法をしても苦しいだけで完治しないのであれば受けたくないと拒否をしました。相談を受けたある心理学の専門家がその人と面接をしたところ、本人も気づいていなかったことが色々と出てきました。その中でも注目すべきことは、本人にとって肺癌になることで家族が自分のことを心配して振り向いてくれることを無意識に望んでいたというのです。つまり、病気という本来であれば好ましい状態ではないことになることによって、その人が最も望んでいた家族の絆をもう一度確認することを無意識のうちにしていたということです。興味深いのは、そのことを本人も気付いていたわけではなく、誘導されて深く内省した時に初めて気づき、その考え方(信念)を変えることによって肺癌が消失したというのです。もちろん、病の考え方を変えることによってすべての病気が治るわけではありませんが、少なくとも自分自身の健康観や病に対する考え方を変えることによって、現在の健康な状態を維持することができるのではないかと私は考えます。

 「病は気から」という先人の教えに従って、いつも前向きな明るい気持ちで過ごすことによって健康な状態を保ちながら生活していきたいですね。

「動脈硬化を予防する方法」 柳川健

動脈硬化という言葉を聞いたことがない人はいないと思います。私たちの動脈は、もともとはとても柔らかいゴムのようなものですが、年齢とともに硬くなってきます。どんなものでも使っているうちに古くなるのは仕方がないのですが、使い方によってその老朽化も差が出てくるのは私たちの体でも同じです。

なぜ動脈硬化は起こるのでしょうか。動脈の中を流れる血液中には色々な物質が流れています。その中でも、LDLという悪い油が血管の壁に付着し、その油が酸化されるとフリーラジカルというものができて血管壁を破壊していくのです。もう少し簡単に言うと、血管の中を流れている血液中のドロドロとした油が血管の壁にこびりつき、その油が酸化されると血管壁を破壊していくのです。

ここで大切なのは、動脈硬化が起こってくる過程で、最初にドロドロとした悪い油(LDL)が血管の壁に付着するということと、その油が酸化される必要がある、ということです。

そうした過程で血管壁が破壊されると、そこには血液を固める成分がくっつきやすくなり、血栓という血の塊ができやすくなります。血栓ができて血管を塞いでしまうと、いわゆる脳梗塞や心筋梗塞といった病気が発症することになります。血管が血栓で塞がれた場合、他からの血流がない場所で病気が生じるのです。脳や心臓、そして下肢がそれにあたります。

心筋梗塞や脳梗塞はとても身近な病気であり、これを読んでいただいている方の中には、これらの病気にかかったことのある人もいることでしょう。現在でも4割近い方がこうした血管が詰まる病気によって命を落としています。

では、どうやって心筋梗塞や脳梗塞を予防すればよいのでしょうか。それは、動脈硬化をいかに進行させないようにするかということです。先ほどお話しましたように、動脈硬化を起こす大きな原因として、血管壁への油の付着とその酸化があります。したがって、そうしたことを起こさせないようにすることが大切なのです。油を付着させないようにするためには、血液中を流れる悪い油を少なくすることです。皆さんも血液検査でご自身の悪い油であるLDLの値を知ることができるはずです。このLDLを通常は140未満にすることが必要です。他に糖尿病や高血圧という病気のある方や、すでに心筋梗塞になったことのある方は、もっと低い値でなくてはいけません。血液中の悪い油が減れば、血管の汚れは少なくなるであろうことは想像がつきますよね。

しかし、悪い油が血管に付着しただけでは血管は破壊されないのです。その油が酸化されたときに生じるフリーラジカルという物質が悪さをするのです。

私たちは空気中の酸素を体内に取り入れ、その酸素を使うことによって様々な代謝を行い生きていけるのです。しかし、酸化という過程においてフリーラジカルというものができてきます。このフリーラジカルは、私たちの体を守るために必要でもあるのですが、その量が多かったり、すぐになくならずに存在することによって組織を破壊することになります。実はこのフリーラジカルは子供に多く存在するのですが、子供はこのフリーラジカルを消し去る物質を体内で沢山つくることができるのです。そのため子供は動脈硬化にはならないのです。40歳を過ぎた頃から、体内で作られるフリーラジカルを消し去る物質が減ってくるために、 40歳を過ぎたら、いわゆる抗酸化対策が必要になります。

抗酸化力を持つものは数多くありますが、その代表はビタミンACEとαリポ酸、コエンザイムQ10などです。こうしたビタミンや補酵素を毎日摂取することによって、動脈硬化の進展を少しでも遅らせることができると考えられています。もちろん、こうしたビタミン剤を摂取した人が動脈硬化性の病気になりにくくなったという、科学的な証拠・証明はありません。しかし、摂取することによるデメリットはない以上、大きな希望を持って私は毎日摂取しています。

特にαリポ酸は、血管から脳の中に容易に入るため、脳の神経細胞の抗酸化に働き、認知症の予防にもなるのではないかと考えられています。

また、悪い油であるLDLを低下させ、HDLという良い油を増やすことにより動脈硬化を予防することができます。このHDLを増やすには運動をすることが一番です。よく歩き、体を動かしましょう、と昔から言われていることは正しいのです。このHDLを増やすためのもう一つの方法はEPAという魚の油を摂ることです。サバやイワシに多く含まれていますので、普段からこうした魚を多く食べるようにすると良いと思います。またEPAはサプリメントとしても普及していますので、そうしたものを利用するのもよろしいかと考えます。

もちろん、喫煙、深酒、という生活習慣のある人はそれを改善させることが必要ですし、糖尿病や高血圧という病気のある人はきちんと治療しておくことが重要です。

動脈硬化は自覚症状なく確実に進行していきますが、現在分かっている方法で少しでもその進行を遅らせることにより、心筋梗塞や脳梗塞を予防し、元気に年を重ねていこうではありませんか。

「これからのクリニックに求められるもの」 柳川健

「日頃より皆様には、当クリニックをご利用いただき、心より感謝しております。」

こんな一文を読んで、違和感を大きく感じる方は、従来の医療を守ろうとする保守派。少し違和感を持つが、当然であると思った方は、以前からの医療を知りつつも快く思っていなかった方。全然違和感を持たないあなたは現代人。というところでしょうか。

体の状態がとても悪くて当クリニックを利用される方はほとんどいません。多くの患者さんは、症状も特にない高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の治療や、 2次検診や定期検査としての内視鏡検査を目的に来院されます。したがって、「患者」という呼称はふさわしくなく、あえて言うなら「健康な患者さん」もしくは「利用者さん」というのが適切でしょうか。

一昔前までは、診療所や病院は具合が悪くなって行く所と決まっていました。具合が悪いから仕方なく行くところ、だから医療従事者は横柄な態度でも仕事ができていたのでしょう。しかし現在では、特に困ってはいないけど健康を維持するために通院する人の割合が増えており、しかも日本ではどの医療機関を選ぶかは利用者さんの自由意志なのですから、医療側も従来の考え方で仕事をしているわけにはいかないのです。

今回は、理想とするクリニックとはどういうものか、少し考えてみたいと思います。私が考える理想のクリニックはシンプルです。それは利用者さんにとって「役に立つクリニック」です。では、皆さんにとって「役に立つクリニック」とはどんなクリニックですか。利用者さんにとっては、近所にあるクリニックですべてのことが間に合うのが理想でしょうが、そうはなかなかいきません。一言で言えば、きちんと守備範囲を持っていて、自分の守備範囲を超えるものに関しては、他の医療機関に正確に振り分けをしてくれるクリニックが理想であると思います。

新聞で読んだ方も多いと思いますが、政府は「総合医」なるものを認定し、総合科を病院、医院に標榜させようとしています。これは、消化器科、呼吸器科といった科目別の診療科目では、利用する患者さんにとってわかりにくいからというのが理由です。日本ではずいぶん長い間、内科医であっても胃腸しか診れない医師や呼吸器しか分からない医師を作ってしまうような卒後教育をしてきたのです。結果として、自分の専門科しかできない開業医も少なくありません。それを是正するものとして「総合科」の認定をしようというのですが、これにもかなり疑問があります。どういう医師にその認定を与えるかという問題です。内科学会の中では、「内科専門医」制度があり、内科全般の研修を受け、知識を持ち合わせていると学会が認定しているのです。しかし、内科専門医のみを総合医とすることもいろいろと問題がありそうです。

私も「内科専門医」ですので、専門の胃腸科以外の内科疾患も幅広く診療しています。しかし、診断や治療が困難な利用者さんは専門施設にご紹介するようにしています。専門の領域においては、胃や大腸の検査に関しては大学病院の内視鏡検査と比較しても劣ることはないと自負しています。しかし、内視鏡治療に関しては、入院施設がない等の理由により、大きな病変に関しては扱わないと決めています。現在そうした患者さんは、国立がんセンター中央病院内視鏡部医長斉藤豊先生や湘南鎌倉総合病院消化器内科部長森山友章先生にお願いしています。そうした連携をきちんと作っておくことが、私のクリニックを利用して下さっている方にたいする私の責任であり義務であると考えています。

そうした連携する医療機関を持っていて、自分の守備範囲をきちんと持っているクリニックが理想であると皆さんも思われますか?これは理想ではなく当然のことと考えるかたも多いのではないでしょうか。ただ、この当然のことが当然のように行われていないのが現状であると思います。したがって、多くのクリニックがこの当然のことをするようになるのが、まずは理想の医療の第一歩であるとは思います。

私が考える本当の理想のクリニックは、実は少し現実離れしているのです。現在のクリニックにも私の理想の一部が取り入れられています。一言で言えば、「癒し」と「医療」の融合と言えばよいでしょうか。単に病気になって具合が悪いから医療機関にかかる、というのではなく、健康を維持していくために定期的に通う場所としてのクリニックを作りたいのです。皆さんは休暇を取って温泉旅行に行ったり、ゴルフに行ったりしますよね。それは日常の疲れを取り、健康を維持増進させることが目的ですよね。そうしたものと同じように定期的にクリニックにかかる。そこでは、検査等による全身のチェックを受けることができ、運動療法、食事療法、鍼灸、整体、エステ、アロマ等による全身のバランス調整と精神的と肉体両面の癒しを得ていただけるようにしたい。これが私の目指している、作りたいクリニックなのです。

あなたにとって健康とは何ですか? 柳川健

 あなたは健康ですか?この質問に皆さんが「もちろん」と答えていただきたい。そんな思いで日々の診療をしています。
 健康とは何でしょう?広辞苑を調べてみると、「身体に悪いところがなく心身がすこやかなこと」と書いてあります。皆さんはどう思いますか?身体に悪いところがあったら健康ではないのでしょうか?心身共にすこやかなこと、つまり心の状態も良好であることが健康の条件というわけです。
 ある程度の年齢になると、検診で異常値を指摘されたり、身体のどこかが悪かったりということが多くなります。何か少しでも問題があると健康ではないと考えがちではないでしょうか。もともと私たちは、ないものに注目しがちです。視力検査のときに環の欠けている方向を言う、あの検査です。何も言われなくとも欠けているところに目が行きます。私たちの持っている習性の一つと言われています。このことは他のことにもあてはまり、身体の不具合が少しでもあるとそこに意識が集中してしまい、不健康な状態という意識をもってしまうのです。もちろんそのことは私たちの身体を守ってくれているとも言えます。私たちはおかしなところがあると病院に行って何か病気がないかと調べてもらうことができるのです。一方で、原因が分かってもその不具合が改善しないものであったり、何も異常がないことが分かっても、その不具合を強く意識したまま生活している人も少なくありません。そうした時、人は健康ではない、不健康である、というのです。

 私は健康であるための条件を「自分自身が健康であると考え信じていること」と考えています。どんな病気を持っていても、どんな状況にあってもその人自身が健康であると感じているのであれば健康なのです。こんな風に書くと、では癌があっても健康なのか、と反論されそうです。しかし、そのような方でも、その人自身が前向きな気持ちで、明るく生活して、自分の病気は大したことはない、自分は健康であると考えていれば、その人は健康であると言って良いではありませんか。ある人が健康かどうかということはその人が決めることであり、他人が決めることではないと思います。たとえそれが医者であってもです。 極端なことを言えば、私たちは生まれた瞬間に、不治の病、致死率100%の病を持っているのです。それは「加齢」という病気です。そう考えると、少しくらいの病気、たとえそれが癌であっても、必要以上に気にしたりすることはないのではないでしょうか?
 そんなことはきれいごと。やはり病気があれば健康とは言えないという人もいることでしょう。そういう人は、あなた自身が持っている健康な部分、健康な気持ちを探して数えることをお勧めします。自分は不健康であると感じている人でも、数えきれないくらいの健康な部分があることに驚くでしょう。

 健康であると信じることが健康状態を作る。私はそう信じているのですが、誤解していただきたくないのです。健康だと信じていれば病院にもいかず、検査も受けなくとも良いのです、という意味ではありませ。検査を定期的に受けることで、私たちは自分自身の健康なところに強い自信を持つことができるのです。たとえば、私は定期的に胃と大腸の内視鏡検査を受けています。そのため、時々ある下痢や腹痛の際にも、悪い病気のためとは考えなくて済んでいます。そのことは私自身が自分の身体が健康であると信じる大きな根拠になっているのです。つまり、定期的な検査を受けて自分の身体の状態を客観的に知ることで、健康であることの確信を強めて欲しいのです。少しくらい悪い所見が見つかった場合でも、良いところに注目し、プロである医師に相談しながら前向きな明るい気持ちで悪いところと関わっていけば良いのです。
 あなたは飛行機に乗る時、整備点検されている機体だと信じているからこそ安心していられるわけです。私たちの体も同じことです。定期的な点検をして、治せるところは治しながら健康感をもち毎日を楽しく安心してすごしたいものです。

 私もこの2月5日で46歳になりました。気持はまだ20代ですので、46という数字に自分でも驚きます。しかし、年々気持ちも充実して楽しく仕事や趣味を楽しんでいます。「100歳以上まで現役で」を信条にして公言していますので、まだまだ人生を楽しむことができると信じています。
 クリニックに通院していただいている方に対しては、健康な状態を維持するお手伝いをさせて頂きたい。そんな気持ちで毎日の診療をしています。是非定期的な検査を受けて不具合のところは早めに修復し、心身ともに健康感をもって日々の生活を楽しんでいただけるお手伝いを今後もさせて頂きたいと思っています。

「開腹手術後の癒着について」 小尾龍右

 なんらかの病気でお腹の手術を受けられた方がいらっしゃると思います。お腹の手術には大別すると、開腹手術腹腔鏡(ふくくうきょう)手術があります。開腹手術がよいか、それとも腹腔鏡手術がよいのかは、病状、年齢、既往歴、手術の難易度などによって高度な医学的判断が必要です。したがって一概にどちらの手術が良い、悪いといえるものではありません。しかし、腹腔鏡手術の方がお腹にのこる傷跡が小さく傷の痛みも少なく腸の癒着もおこりにくいということから患者さんに優しい手術として徐々にひろまっています。

 なぜ、腸の癒着がおこりにくいと患者さんに優しいのかといえば、腸の動きと関係があります。腸はお腹の中で食べ物を消化するために自由に動きながら、しゃくとり虫のように蠕動運動をしています。この、「腸が自由に動ける」ということが重要です。手術によって癒着が起きると、腸と腸または腸と傷口が接着剤ではりつけたようになるため、腸の動きが制限されます。そうすると、消化に時間がかかったり、ひどい場合は食べ物が腸の中に停滞、貯留して、嘔吐や腹痛をひきおこす腸閉塞となります。また、大腸内視鏡検査を行う時も内視鏡の動きが制限されて挿入が困難になったり、検査時の腹痛につながります。

 例えば、私たちが普段はいているズボンを想像して下さい。右足、左足が自由にうごかせるからこそ、階段の昇り降りや走ることができます。しかし、ズボンの右足と左足があっちこち、べたべたと接着剤でくっついてしまったらどうでしょう。普通に歩くことすら難しいとおもいます。腸に癒着がおきるということは、両足がくっついたまま歩くようなものです。したがって、癒着が起きないほうが患者さんに優しいわけです。

 ただし、癒着の程度がほんのすこしであったり、腸の動きの邪魔にならない部位であれば癒着があってもなんら問題はありません。実際、開腹手術後になんの後遺症も無く、大腸内視鏡を苦も無く受けていらっしゃる方もおられます。さらに、開腹手術の時に特殊なフィルムを使用して腸を保護したり、手術の直後から大建中湯(だいけんちゅうとう)という漢方薬を服用することで癒着や腸閉塞の防止に効果を上げています。医学は進歩しています。

ここまで読まれたかたは、「政官財の癒着」という言葉のイメージもありますので、癒着=悪いこと、という印象が強まったと思います。しかし、それは誤解です。癒着というのは手術によってできた傷口を塞ぐために必要な生体反応が起こった結果なのです。言いかえると、手術を受けて傷口がのりづけされるときに、のりがはみ出してしまい、そのために腸と腸または腸と傷口がくっついてしまったという結果であって、癒着という反応が悪いわけではないのです。「癒える」ときに「接着」するから癒着なのです

 体の中でおきることには全て意味があります。それがときには良い結果を生む場合もあるし、悪い結果につながることもあります。しかし、それは体が生きよう、治ろうとして頑張った結果なのです。だから「なぜこんなことになったのだ」と落ち込まないでください。人間はいくら「死にたい」と念じても心臓の鼓動を止めることは出来ません。逆に「生きたい」と念じても停止した心臓を動かすことはできません。精神が、肉体という場を借りて、生かして頂いている存在が人なのです。ですから、癒着肉体が治ろうとして頑張った結果なのだと解釈してあげてください。そして、頑張ったけれど余分に癒着を起こしてしまった肉体を食事療法や薬でサポートして、元気に長生きさせていただくという考え方で病気を捉えて欲しいと思います。

 開腹手術を受けた方の食事に関する注意事項は、一度にたくさん食べ過ぎないことが重要です。なぜかというと、癒着があると腸の動きに制限が加わるため、一度に処理できる食べ物の量もおのずと決まってしまうからです。道路にたとえると、一定の交通量なら渋滞を起こしませんが、車が増えると流れが詰まります。それとおなじです。したがって、満腹の食事を3食ではなく、腹7分目にして4食いただくことをお勧めします。

 また、海藻、キノコ類、イモ類も控えたほうがよいでしょう。これらの食品は食物繊維が多いので、普通の人が食べれば便通をよくしてくれますが、腸に癒着がある方の場合は食物繊維が腸の動きの悪いところで渋滞をおこして腸閉塞を発症する場合があります。少量なら問題ありませんが、人並みにたべることは避けたほうが良いと思われます。

 薬は、便通が一定になるように便秘薬をご自分にあうように調節されるとよいでしょう。癒着の程度や消化力は十人十色ですから、これを飲めばよいという特効薬はありません。それゆえ、何を飲めばよいのか、毎日排便がないと悪いのではないかと、悩んでしまう方もあると思いますが、極論すれば腸閉塞にならないことを目標にすればよいのです。日々の便の硬さや出方をみたうえで、食事や薬を医師と相談しながら調節する余裕は十分にあります。時間をかけてご自分にあった調整法を見つけてください。

「心の健康」 柳川健

皆さんは健康ですか。大きな病気がないから健康。特に症状がないから健康。人それぞれ健康であると感じる方法は違うでしょう。私は、自分が健康だと思っている人が健康だと常々感じています。
 身体的な症状がないということはとても大切であり、どこかが痛いという状態ではとても健康であるとは感じられません。しかし、身体的に健康であっても、気持が沈んでいて、幸福感が持てなければ、やはり健康とは言えないでしょう。身体的、精神的、両者が健全な状態でなければやはり健康であるとは言えないと思います。

 では、あなたの心は健康ですか?心の健康ってなんでしょう?難しい質問でしょうか?
質問を変えて、あなたは幸せですか。あなたには希望がありますか。いかがでしょう。
幸せではないし希望もない。という方は一度ご相談ください。少なくともそういう方の心は健康とはいえません。
 心が健康でないとどうなるでしょうか。毎日が憂鬱で楽しくありませんよね。朝起きた時から一日の始まりが億劫に感じるようでは困ります。夜も寝つきが悪くついついお酒に手を出してしまうという方もいるでしょう。気持が沈んでいると免疫力が低下しますので、風邪などの感染症にかかりやすくなり、癌にもなりやすいと言われています。たかが気持の問題と簡単に片づけてはいけないのです。

 心を健康な状態にするにはどうすればよいのでしょうか。体の健康のために、皆さんは運動をしたり食事に気をつけたりしますよね。心の健康のために何かしていますか?心の健康法について書かれた本は意外と少なく、話題になることもあまりないような気がします。
 まず考えていただきたいのは、心の状態は何が、あるいは誰が決めるのかということです。他人に悪口を言われたから元気がなくなったり、景気が悪いからうつ気味になったりする人がいます。私たち人間は、外界からの刺激によって自分自身の心の状態が変わることを知っています。では、私たちの心の状態は外界からの刺激が決めていると言ってよいのでしょうか?私は違うと思います。私たちの心の状態は私たち自身が決めていると考えています。同じ出来事であっても、人によってとらえ方、反応の仕方は違います。

 例えば、私のクリニックでは毎日大腸内視鏡検査を行い、多くの方が検査を受けておられます。時に大きなポリープが見つかり、一部がガン化していることがあります。内視鏡で切除し、その後の追加治療も必要のない、私から見ればすごく運の良い人も少なくありません。そうした場合の患者さんの反応も色々です。ガンにはなっていたけれども大きな手術を受けることもなく内視鏡治療だけで済んだことを喜ぶ人。逆に、ガンになったということで悩み、何度御説明しても再発や転移を恐れてノイローゼ状態になっていく人。人の反応は様々であることをいつも痛感しています。どちらの反応が良いとか悪いということを言っているのではありません。あなたならどういう心の状態を作っていたいかということです。

 私たちの心の状態は私たち自身が決めている。心の状態は自分自身が決める。まずはそのことを自分で決めなければ、私たちは心の健康を得ることはできないと思います。
 心の状態はあくまでも自分自身が決めること、そう決心すると色々なことが変わります。まず心が動揺しにくくなります。外界で起こることは様々です。その出来事自体が良いのか悪いのかを判断しようとすることなく、自分自身で良いと思えるように解釈することです。このことは知っていても実践することは中々難しいのですが、知らないで出来事に振り回されるよりも、知って訓練を重ねたほうが自分自身が楽に生きられるような気がします。
 「過去と他人は変えられないが、将来と自分は変えられる」私の好きな言葉の一つです。
確かに過去に起こったことは変えられませが、過去に起こったことをどのように意味付けをするかは自分自身が決めることです。つまり、過去に起こったことで、現在悪い思い出と考えていることでも、自分自身が考え方や見方を変えれば違ったものに変わりうると思うことです。すべては自分の心の中で作り上げているもの、それがその人にとっての現実の姿であると言えるのではないでしょうか。

 私は,皆さんが「健康で長生きする」ことをお手伝いすることを自分自身のミッションとしています。身体的な健康だけではなく、心の健康を作るお手伝いもしていきたいと考えています。元気が出ない、幸福感がもてないなどという方も気軽に診察の時にご相談いただきたいと思います。薬など使わなくとも、ちょっとした考え方の転換で心の状態が変わることもあるのです。場合によっては安定剤のような薬も処方することができますので、遠慮なくお話ください。

「『気』のはなし」 小尾龍右  

東洋医学には『気』の概念があります。『気』とは目に見えない、生命エネルギーであり、体を循環するものと定義されています。
 病院にいったら検査では異常が無いので、「気のせいですよ。だから大丈夫です。」と言われたことはありませんか?西洋医学では「気のせい」は「異常なし」の意味ですが、東洋医学では「気のせい」とは『気の異常』による疾病であると考えます。 
 では東洋医学でいう『気の異常』とは何でしょうか?それは、『気虚』、『気鬱』、『気逆』の3つです。気の循環を川の流れに例えると、『気虚』は川の水が不足している状態、『気鬱』は川の流れが停滞している状態、『気逆』は川の流れが逆流している状態を意味します。ですから、『気虚』だと元気がない、『気鬱』は気分が憂鬱といった症状になります。『気逆』は腹から上へ突き上げるような不快な症状となります。「腹が立つ」といいますが、これも気逆の一種です。
 それぞれの症状に応じて漢方薬や鍼灸などで治療しますが、それだけが治療方法ではありません。『気』は自分の内部だけで循環するものではなく、すべての生物がやり取りをしていますので、人と人、人と動物、人と植物同士が良い『気』をやり取りすることでも改善します。
 『気』は目に見えませんが、「言われてみれば、なんとなく感じるなぁ」と思いませんか?『気』の流れを感じるように心がけ、良い『気』がお互いに流れあうようになさってみてください。よくない『気』は海や山などに放ち、よい『気』を取り入れるようにしてください。きっといいことがあると思いますよ。

「腫瘍マーカーとがんの診断」 柳川健

皆さんがよくご存じのPSAやCEAという腫瘍マーカーが、あたかもがんを早期診断できる血液検査であると勘違いしていませんか?
 腫瘍マーカーは以前にも何回か話題にしたことがありますが、現在のところ早期診断に有用であると確定されている腫瘍マーカーは残念ながら一つもありません。
 PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーとして50歳以上の男性の場合一度は測定したことがあるかもしれません。もちろんこのPSA高値で前立腺がんが見つかった方もいらっしゃると思います。しかし、PSAが正常であっても前立腺がんは完全には否定できず、また高値であっても前立腺がんではないことも多いのです。CEAは大腸がんや乳がんなど色々ながんの時に高値となりますが、多くの場合は進行がんになってからのことが多いのです。
 腫瘍マーカーは、外科的手術や化学療法の際に、その効果を判定するために使用するのが正しい使い方なのです。もともと診断のために使うものではないのです。そのことを知っていただいた上でご自分の腫瘍マーカーを理解していただきたいと思います。
 血液検査でがんの早期診断ができるようになることが理想的な医療だとは私も思います。しかし現状ではそうした時代はまだまだ来そうにありません。日本人に多いがん、特に胃がんや大腸がんは定期的な内視鏡検査を受けることによってほとんどの場合早期に見つかりますので、ぜひ40歳以上になったら定期検査をお受けください。

「コミュニケーションは難しい!?」 柳川健

人に自分の考えや気持ちを伝えること。あるいは人の考えや気持ちを知ること。それがコミュニケーションです。毎日、その瞬間ごとにしていることですが、このコミュニケーションがなかなか難しいと感じることはありませんか。

 コミュニケーションは、言葉を使って行うものと考えてしまいがちですが、実は身振り手振り表情体の姿勢など様々な要素を通じて行われています。  たとえば営業マンが家を訪ねてきた場合、きちんとした背広で来ることが通常です。これがたとえばポロシャツとサングラスで来たら皆さんはどうしますか。その人がたとえすごく良い人であったとしても、外見だけで怪しい人、危険人物として玄関の戸を開けないのではないでしょうか。医療においても同様で、初めて受診した病院の医師が、ジーパンにTシャツで診察をしていれば、たとえ名医であっても大丈夫かな、と不安な気持ちになりますよね。

 このように、私たちは特に初対面の場合、その人の身なりから色々なことを情報として受け取り判断することが多いのです。したがって、服装や髪型などの外見は極力整えておかなければならないでしょう。一方、人は外見で判断してはいけない、とも言われます。その人の本質は外見だけでは分からないということは事実でしょう。実際にその人と話をしたり、その人の行動を見たりしてみるとその人の良さが分かり、信頼できる人物であることが分かることもあります。逆に外見や言葉では誠実そうであっても、実際の行動に誠実さがない場合もあります。つまり私たちは外見、言葉、行動など様々なものを通じて他人とコミュニケーションをとっているのです。

 皆さんは、そんなつもりで言ったわけではないのに勘違いされた。とか、そんなことを言う人とは思わなかった、と人の言葉に傷ついたりすることはありませんか。こうしたコミュニケーションにおける勘違いは常に起こっていることで、そのことがしばしば人間関係を悪くしているのです。

 たとえば、「わたし、もうやめました」と聞いたときあなたは何を想像しますか。仕事をやめた。タバコや酒をやめた。遊びに行くのをやめた。色々なことが考えられます。今は何の脈絡もなく言葉だけを取り上げたので特に分かりにくく、何をやめたのかは全く特定することは出来ません。しかし、私たちは日常の会話のなかで、これと同じようなことを繰り返し行っているのです。話しの中で、当然相手に自分の考えが伝わると思っていった言葉が相手には全く違う内容として伝わることが起こるのです。

 私たちは現実をありのままに知ることは出来ない。現実はすべて個人のフィルターを通して認知されたものに過ぎない。と心理学では考えられています。つまり、すべてのことはその人の過去の記憶、経験等によって作られたフィルター(あるいはマップ)を通して認識されるため、正確に物事を伝えるのは難しいというわけです。このフィルターを通して私たちに情報として入ってくるのは、視覚(見て)、聴覚(聞いて)、嗅覚(におって)、味覚(味わって)、体感覚(体で感じて)からであり、どういった情報が入りやすいかはその人によって異なるのです。

 したがって、ある人にできるだけ分かりやすく物事を伝えるためには、その人が主としてどういった感覚(たとえば視覚など)からの情報を受け取るのかを知ると便利なのです。その人が話をしている時、まるで映像を見ているかのように話す人は視覚を主として使いますし、その場の音や、理屈を説明するように話す人は聴覚を主として使っているのです。慣れないとその人が何を主として使っているかを判断することは難しいのですが、大切なことは、人がある情報を受け取る方法は、個人ごとに違うのだということを知ることです。情報の受け取り方が人によって違うということを知ることはとても大切です。それを知らないことがしばしば人を誤解したりする原因になってしまうのです。

 では、人はそれぞれ情報の受け取り方が異なるということを知った上で、どうしたら上手にコミュニケーションを取ることができるのでしょうか。それは、確認をきちんとするということです。たとえば、ある人が「彼は良い人ですよね」と言ったとします。普通であれば「そうですね」と返して終わらせてしまうかもしれませんが、そこで「彼のどういうところが良いとあなたは思うのですか」と確認するとどうでしょう。「彼の優しさが良いと思う」と返事が返ってきたときに、さらに「具体的に彼のどういうところがやさしいと感じるのですか」と質問するとさらによく分かってくる、というわけです。

 長年連れ添った夫婦や仲の良い友人の場合、言わなくても分かっているだろうと考えて、ついついこの確認作業を会話の中で省略しがちです。その結果、思ってもいなかったような誤解が生じてしまうことも少なくないと思います。 人はみんな捉え方が違うということをもう一度認識したうえで、誤解のないコミュニケーションを心がけていきたいものですね。
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