「コミュニケーションは難しい!?」 柳川健

人に自分の考えや気持ちを伝えること。あるいは人の考えや気持ちを知ること。それがコミュニケーションです。毎日、その瞬間ごとにしていることですが、このコミュニケーションがなかなか難しいと感じることはありませんか。

 コミュニケーションは、言葉を使って行うものと考えてしまいがちですが、実は身振り手振り表情体の姿勢など様々な要素を通じて行われています。  たとえば営業マンが家を訪ねてきた場合、きちんとした背広で来ることが通常です。これがたとえばポロシャツとサングラスで来たら皆さんはどうしますか。その人がたとえすごく良い人であったとしても、外見だけで怪しい人、危険人物として玄関の戸を開けないのではないでしょうか。医療においても同様で、初めて受診した病院の医師が、ジーパンにTシャツで診察をしていれば、たとえ名医であっても大丈夫かな、と不安な気持ちになりますよね。

 このように、私たちは特に初対面の場合、その人の身なりから色々なことを情報として受け取り判断することが多いのです。したがって、服装や髪型などの外見は極力整えておかなければならないでしょう。一方、人は外見で判断してはいけない、とも言われます。その人の本質は外見だけでは分からないということは事実でしょう。実際にその人と話をしたり、その人の行動を見たりしてみるとその人の良さが分かり、信頼できる人物であることが分かることもあります。逆に外見や言葉では誠実そうであっても、実際の行動に誠実さがない場合もあります。つまり私たちは外見、言葉、行動など様々なものを通じて他人とコミュニケーションをとっているのです。

 皆さんは、そんなつもりで言ったわけではないのに勘違いされた。とか、そんなことを言う人とは思わなかった、と人の言葉に傷ついたりすることはありませんか。こうしたコミュニケーションにおける勘違いは常に起こっていることで、そのことがしばしば人間関係を悪くしているのです。

 たとえば、「わたし、もうやめました」と聞いたときあなたは何を想像しますか。仕事をやめた。タバコや酒をやめた。遊びに行くのをやめた。色々なことが考えられます。今は何の脈絡もなく言葉だけを取り上げたので特に分かりにくく、何をやめたのかは全く特定することは出来ません。しかし、私たちは日常の会話のなかで、これと同じようなことを繰り返し行っているのです。話しの中で、当然相手に自分の考えが伝わると思っていった言葉が相手には全く違う内容として伝わることが起こるのです。

 私たちは現実をありのままに知ることは出来ない。現実はすべて個人のフィルターを通して認知されたものに過ぎない。と心理学では考えられています。つまり、すべてのことはその人の過去の記憶、経験等によって作られたフィルター(あるいはマップ)を通して認識されるため、正確に物事を伝えるのは難しいというわけです。このフィルターを通して私たちに情報として入ってくるのは、視覚(見て)、聴覚(聞いて)、嗅覚(におって)、味覚(味わって)、体感覚(体で感じて)からであり、どういった情報が入りやすいかはその人によって異なるのです。

 したがって、ある人にできるだけ分かりやすく物事を伝えるためには、その人が主としてどういった感覚(たとえば視覚など)からの情報を受け取るのかを知ると便利なのです。その人が話をしている時、まるで映像を見ているかのように話す人は視覚を主として使いますし、その場の音や、理屈を説明するように話す人は聴覚を主として使っているのです。慣れないとその人が何を主として使っているかを判断することは難しいのですが、大切なことは、人がある情報を受け取る方法は、個人ごとに違うのだということを知ることです。情報の受け取り方が人によって違うということを知ることはとても大切です。それを知らないことがしばしば人を誤解したりする原因になってしまうのです。

 では、人はそれぞれ情報の受け取り方が異なるということを知った上で、どうしたら上手にコミュニケーションを取ることができるのでしょうか。それは、確認をきちんとするということです。たとえば、ある人が「彼は良い人ですよね」と言ったとします。普通であれば「そうですね」と返して終わらせてしまうかもしれませんが、そこで「彼のどういうところが良いとあなたは思うのですか」と確認するとどうでしょう。「彼の優しさが良いと思う」と返事が返ってきたときに、さらに「具体的に彼のどういうところがやさしいと感じるのですか」と質問するとさらによく分かってくる、というわけです。

 長年連れ添った夫婦や仲の良い友人の場合、言わなくても分かっているだろうと考えて、ついついこの確認作業を会話の中で省略しがちです。その結果、思ってもいなかったような誤解が生じてしまうことも少なくないと思います。 人はみんな捉え方が違うということをもう一度認識したうえで、誤解のないコミュニケーションを心がけていきたいものですね。

柳川クリニック

みなとみらいケンズクリニック

カテゴリー

最新のエントリー