「花粉症に役立つ漢方薬」 小尾 龍右
今年は例年よりも花粉の量が多いそうです。
花粉症でお困りの方も多いと思いますが、漢方では
どのように治療するかお話ししたいと思います。
花粉症の典型的症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりです。
花粉症に対する代表的漢方薬である小青竜湯は麻黄、
甘草、桂枝、五味子、半夏、芍薬、乾姜、細辛の8つの
生薬を混合して作ったものです。
料理に例えるなら、8つの食材を一定の比率でミックス
してのせたミックスピザのようなものといえます。
この8つの生薬の作用を簡単に説明すると、麻黄と甘草
は鼻水や鼻づまりを抑え、桂枝、五味子、半夏はくしゃみ
を抑えます。芍薬は血のめぐりを改善し、乾姜、細辛は肺を
温め、複数の生薬が協力して花粉症の症状を抑えます。
鼻の症状なのに、肺を温めたり、血のめぐりを改善する生薬
が入っているのはなぜでしょうか。
その理由は、冷たい空気を吸うと肺が冷えて血の巡りが悪く
なり、それをきっかけに鼻炎になる場合があるからです。
今起こっている鼻炎症状を治すだけでなく、鼻炎を予防する
治療も同時に行っているところが漢方治療の特徴です。
さらに、漢方治療に一貫する治療哲学は「和」の心です。
聖徳太子が「和をもって貴しとなし、さからうこと無きを宗とせよ」
と言ったように、それぞれの生薬が個性を主張しながら争いません。
8つの生薬が協調して治療効果を発揮しているのです。
漢方薬を服用されるときは「和」の精神で、心身の「和」のみならず、
人の「和」、社会の「和」にも心を向けて頂ければ、漢方医として
嬉しく思います。
(当院の一般的な治療方針として紹介しています。漢方治療は、
個人により処方や対応が異なります)