「漢方とメンタルヘルス」  手塚健太郎  

 

東洋医学には「気」「血」「水」という概念があります。
健康な状態では、これらが体に過不足なく存在し滞ることなく流れ巡っていて、
大まかに言うと、何らかの原因でこれらの流れが滞ったり不足したりした時に、
様々な不調が生じると考えられています。

漢方医はこの理論に沿って、目の前の患者さんの体の中で滞ったり不足したり
しているものと、その時の患者さんの持っている強さ(≒体力)とを見極め、
適切な漢方薬を処方して治療を行います。

東洋医学の古典を読むと、古来「気」「血」「水」の滞りや不足を起こす原因の多くは、
細菌やウイルスなどの感染症、打撲や外傷、厳しい気候、飢餓、肉体疲労などだった
のですが、文明が進んだ現代では人間を取り巻く社会が複雑化した結果、これらに
代わって精神的なストレスの占める割合が大きくなっていると感じます。

特に「気詰まりな人間関係」などから来る精神的なストレスによって、
「気」の流れの滞りが生じやすく、これが長く続くと「気」の不足や「血」「水」の異常も
伴ってくるように感じます。

「気」の滞りのことを東洋医学では「気うつ」と呼び、
これは現代精神医学で言う「抑うつ状態」に非常に近似した状態(完全に一致するものではありませんが、イメージとして共通するところは多い)です。

東洋医学的な視点で、特にこの「気うつ」に着目して「気」「血」「水」のバランスを整える
治療を行うことは、このような現代人のメンタルヘルスの向上に有用だと考えています。

また、精神的なストレスは、俗に言う「気晴らし」の一つとして、一人で抱え込まず気心の
知れた相手に話を聴いてもらうなどすると少し楽になるものですが、人間関係が希薄に
なった現代では気軽に悩みを相談できる相手に恵まれにくい方も多いと思われます。

漢方診療の中で、精神科医としての経験もいかしてお話を伺うことで、
漢方薬の効果をさらに高められればと考えています。

 


 

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