「勘違いの多い医学常識」 柳川 健
一般的には当たり前と考えられている医学知識のなかには、
もう古くなってしまったことや、明らかに間違っていることなどが
たくさんあります。
今回はその中でも重要と思われるものをいくつかご紹介します。
「かぜをひいたら早めにかぜ薬を飲んだほうがよい」このように考え
ている人が多いのです。テレビコマーシャルの影響も大きいと思います。
全く根拠がありません。かぜを治す薬はないのです。
症状が辛ければ薬を使って抑えるということです。
特に市販の総合感冒剤には解熱剤、咳止め、痰切りなど様々な
薬剤が混合されています。したがって、すこし喉が痛いからといって
総合感冒剤を使うことは体にとても悪いのです。
しかし漢方薬の麻黄湯は初期のかぜに効果があります。
インフルエンザの場合にも麻黄湯はウイルスの増殖を抑えることが分かっています。
風邪かな、と思ったら麻黄湯をお湯に溶かして飲みましょう。
「かぜをひいたときは抗生物質を飲むと良い」これも多くの人が信じている間違いです。
ウイルスによるかぜが発症した後に、二次感染といって細菌(ばい菌)が感染する
ことがあります。その予防のために抗生物質を投与されることが我が国では多いのですが、
全く根拠がありません。
抗生物質による薬害を減らすためにも、単なる風邪に抗生物質は使わないようにしましょう。
最後に、当院で良くある話。
「検診で便潜血反応が陰性なので大腸の病気はない」大腸内視鏡検査をお勧めすると、
このようにおっしゃる方が少なくありません。進行性大腸ガンがあれば便潜血反応は2回の
うち1回は陽性になることがほとんどです。しかし、早期大腸ガンや内視鏡治療ができるような
大きさの大腸ポリープの場合には便潜血反応は陰性になることも多いのです。
大腸ガンの多くは大腸ポリープ(癌になる前の段階という意味で)が成長してできてきます。
この段階で内視鏡治療すれば開腹手術を受けることなく比較的簡単に処置が終わります。
便潜血反応の有用性を否定するわけではありませんが、少なくとも50歳になったら一度は
大腸内視鏡検査をお受け下さい。